『わかっていても』は“写真集”を目指して作られた? 韓国の恋愛ドラマと本の関係性

韓国ドラマで欠かせない童話・詩集の世界

 若い世代を中心に日本でも人気を集めた『わかっていても』には、これまで韓国ドラマで多用されてきた材料がほとんど使われていない、という話を前回書いた(参考:“韓国の恋愛ドラマ”に不可欠なはずの要素がない? 『わかっていても』に感じた可能性)。とすると、この“一冊の引用”という材料は? というと、当然のごとくそのようなシーンはない。

 ただ、じゃあ韓国ドラマとして“心の一冊”にはなっていないのかと思えば、意外とそうでもないと感じた。というより、この作品はきっとそこを目指して作られたのではないかと思うのが、“写真集”だ。

 『わかっていても』には原作漫画がある。実写になった時に一番気になるのは、好きな漫画の中のあの人を誰が演じるのか、ということ。キャストが想像と違ってちょっとがっかり、という経験は誰もが一度はするものだけれど、ここ最近、韓国のドラマは漫画を上回ってくる。“漫画の世界から飛び出してきたような”という表現はもう古いのかもしれない。このドラマはそれをはるかに超えている。

 漫画よりも美しい世界が実写で広がっているのだ。『わかっていても』の立体的に作り上げられた映像は、どのページにもひたすら美しい主人公たちが映り、その世界へと誘う写真集のようだ。

 上記記事の中で、このドラマは「ただそこにいる二人に見惚れることに価値のあるドラマである」とも書いた。

 文字は必要ない。道徳的な慣習や心の美しさ、言葉による感動、そういったものを求めるものではなく、ただそこにあるものをひたすら美しく切り取りました、というようなそれが、“韓国の恋愛ドラマ”だというのはとても新鮮だった。

 “心の一冊”を目指すことはそのままに、詩集やエッセイ、絵本から写真集へと本棚を移した作品が、InstagramやTikTokなど、写真・動画で伝えるメディアに親しむ若者に受け入れられたというのも頷ける気がする。

■配信情報
『わかっていても』(全10話)
Netflixにて配信中
監督:キム・ガラム
出演:ハン・ソヒ、ソン・ガン
制作:ビヨンドジェイ、スタジオN、JTBCスタジオ
写真はJTBC公式サイトより

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