“韓国の恋愛ドラマ”に不可欠なはずの要素がない? 『わかっていても』に感じた可能性

『わかっていても』は新しい恋愛ドラマ?

 韓国ドラマ『わかっていても』がかなりの人気なんだと知ったのは、第3話の配信が開始された頃だっただろうか。もう少し後だったかもしれない。個人的にも、初回から土曜深夜(日付は日曜)に配信されるやいなや毎回フライング気味のタイミングで観ていたし、ある時からTOP10に入っていることに気づき、場合によってはかなり上位にランクインしていて「やっぱり強いんだな、恋愛ドラマは」と思っていた。

 『わかっていても』は、愛は信じていないが恋愛はしたい女性ナビ(ハン・ソヒ)、と恋愛はめんどくさいがいい感じの相手は欲しい男性ジェオン(ソン・ガン)が繰り広げるハイパーリアリズムロマンスという前触れだった。「この美しすぎる二人の恋は、この先どうなっていくんだろう……」3話終了時点で、今後ナビの母との確執、ジェオンの過去の傷や孤独、恋をできない理由などが明かされていくのだろう、と予想され、楽しみに見ていた。

 で、すでに最終回まで観たけれど、予想していたすべてが、触れられないまま終わってしまった。

 このドラマは完全に“新しい韓国恋愛ドラマ”だ。今まで韓国の恋愛ドラマを数観ている人ほど、そう感じたのではないだろうか。もっというとこれは韓国の恋愛ドラマではない、と言えるかもしれない。なぜなら、私たちが観てきたそれとはあらゆる意味で全く違っていたから。

 韓国恋愛ドラマには、必要不可欠な材料がある。これまで繰り返し使われてきた材料が。

 運命じゃない恋愛、初恋じゃない恋愛、『わかっていても』には私たちがこれまで何度も出会ってきた、数々の“運命の/特別な二人”は存在しない。ただ普通のリアルな大学生の恋があるだけだ。

 子供の時に出会っていた、特殊な能力が反応しあった、親との確執、過去のトラウマの共有、因縁、復讐が絡んだ二人でもない。こういった韓国恋愛ドラマの主な材料がほとんど使われていないのである。ここ最近多い、ゴーストやファンタジー、SFも当然なし。

 また恋愛ジャンルに限らず、韓国ドラマの大きな要素の一つであるお金についてもほぼ無関係のところで作られているというのも大きいだろう。財閥や大金持ちというのが入っていないのはもちろん、その対極として存在する貧しい、苦労人もいない。みな美大に通うということは、ある程度経済的に余裕のある家に生まれているだろうという設定もフラットで、「じゃあいったい、何が入っているの?」と韓国ドラマの味を探すことに必死になった人も多いのではないだろうか。

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