『おかえりモネ』時には衝突も? 百音と幼なじみたちが示す、さまざまな選択肢

『おかえりモネ』百音と幼なじみが示す選択肢

 そんな2人に比べると、明日美は一見、背負うものが少ないように見える。だが、彼女も地元に戻らないことへの罪悪感を抱いていた。百音が気仙沼に帰ると告げた時、「東京に出てきたら、地元のことなんか忘れて過ごすよ。なのに、何でうちは地元大変だからって、みんな帰らないといけないみたいな……」とこぼす場面があった。ただ、自分の好きな場所で、好きな人といたいだけなのに、「私薄情かな?」と思ってしまうのは、地元が被災したならではの葛藤だろう。

 その上で、「私は帰らない」という決断をした明日美。5人中4人が地元に戻ったからといって、決して“地元に戻ることが正しい”とはしないのが本作だ。そして、それを示しているのが明日美であり、彼女は「なんで地元で頑張ってるのが偉いみたいになるの?」とズバッと言ってくれる。そのハッキリとした性格に、百音も救われてきたのだと思う。

 また、今後、百音と深く関わってきそうなのが悠人だ。悠人は三生と同じく仙台の大学に進学し、就職で地元に戻ってきた組。彼は5人の間に流れる温かい空気を作る存在だった。現在は、気仙沼市役所で働いているため、気象の仕事を探す百音にとっては、鍵を握る人物になりそうだ。

 観ているこちらが羨ましくなるほど、百音と4人の幼なじみの関係性は美しかった。だがそれは、同じ場所で同じような痛みを分け合ってきたからかもしれない。18年もの間、ずっと支え合ってきた5人にとって、この“6年”という歳月はどのような影響を及ぼすのだろう。それぞれ見てきたものや経験してきたことは違うはず。だからこそ、時にはぶつかることもあるかもしれない。

 第98話では、「地元のために働きたかった」と東京から戻ってきた百音に、亮が「ごめん、綺麗事にしか聞こえないわ」と辛辣な意見をぶつける場面があった。離れてしまったそれぞれの心。昔のように分かり合える日が来ることを信じたい。

※高田彪我の高は「はしごだか」が正式表記

■放送情報
NHK連続テレビ小説『おかえりモネ』
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45、(再放送)11:00 〜11:15
※土曜は1週間を振り返り
出演:清原果耶、内野聖陽、鈴木京香、蒔田彩珠、藤竜也、竹下景子、夏木マリ、坂口健太郎、浜野謙太、でんでん、西島秀俊、永瀬廉、恒松祐里、前田航基、高田彪我、浅野忠信ほか
脚本:安達奈緒子
制作統括:吉永証、須崎岳
プロデューサー:上田明子
演出:一木正恵、梶原登城、桑野智宏、津田温子ほか
写真提供=NHK

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