『うきわ』二葉さんになぜ惹かれてしまうのか 爽やかな色気を放つ森山直太朗
愛する人に浮気されていると知った時。相手に怒りをぶつけるか、何も言わず悲しむか……。『うきわ ―友達以上、不倫未満―』(テレビ東京系)の二葉さん(森山直太朗)は後者だ。妻の聖(西田尚美)と、田宮先生(田中樹)の浮気現場を目撃しても、そこに乗り込むことはしない。妻が帰宅したあとも、何事もなかったかのようにやり過ごす。そっと、悲しみを押し込んで。
聖に対する二葉さんの想いは、究極の“愛”だと感じる。誰かと一緒にいて、妻が笑顔でいられるならそれでいい。たとえ、その相手が自分ではないとしても。そう思えるだけでもすごいが、二葉さんは「笑顔にしてくれる相手に感謝しなきゃいけない」とまで言ってのけるのだ(そう言い聞かせているだけのようにも思えるが)。
そんな誠実な姿勢を目の当たりにした麻衣子(門脇麦)が、彼に好意を持つのも無理ない。浮気をしている夫のたっくん(大東駿介)とは正反対で、真っ直ぐな二葉さん。優しすぎるあまりに、少し頼りなくも見えるけど、全てを包み込んでくれそうな安心感がある。二葉さんは、結婚を意識した時に選びたくなる男性だ。
劇中に、麻衣子と二葉さんが2人で砂のお城を作るシーンが登場する。二葉さんはきっと、教科書通りの綺麗なお城を作るのだろう。対して、たっくんは個性的なお城を作るタイプだ。誰も思いつかないような、彼にしかない独特のセンスで。そんなたっくんを選んだ麻衣子は、彼と結婚していなければ、二葉さんのような男性に惹かれることはなかったと思う。たっくんといるからこそ、二葉さんの優しさが、痛いほど身に沁みるのだ。麻衣子は二葉さんのことを、溺れた時に救ってくれる“うきわ”だと例えているが、別の意味では、たっくんも“うきわ”なのかもしれない。一瞬でも手を離したら、すぐに福田さん(蓮佛美沙子)のような“波”に攫われてしまうのだから。
二葉さんは、たっくんと違ってキザなことは言わないし、女性の扱いも上手な方ではない。麻衣子にかける言葉も、どこか不器用だ。でも、だからこそ本当に向き合ってくれている感じがする。押し付ける優しさではなく、真心のこもった優しさだというのが伝わるのだ。そして、ただ優しいだけではなく、愛宕さん(小西桜子)が麻衣子のことを“可哀想”と言った時には、「そういうのは良くないよ」とハッキリ返す強さがあるのも二葉さんの魅力である。優しすぎるがゆえに、弱く見えてしまう部分もあるが、大切な人のためにはちゃんと強い。加えて、ベランダに出てタバコを蒸す時の物憂げな表情や、聖の浮気に苦しむ姿。どこか掴めない人間らしさがあるからこそ、麻衣子を含め私たち視聴者も虜になってしまうのだろう。