『イン・ザ・ハイツ』『オールド』『シンデレラ』 ラテン系俳優の主演作が目立つ2021年

2021年、ラテン系俳優の躍進

ベテランも新人も主演俳優として注目

『オールド』(c)2021 Universal Studios. All Rights Reserved.

 M・ナイト・シャマラン監督による『オールド』は、人を急激に老化させる謎のビーチにやってきてしまった家族の恐怖と必死の脱出劇を描いたスリラーだ。8月に日本でも公開された本作では、メキシコ出身の人気俳優ガエル・ガルシア・ベルナルが主演を務めた。『天国の口、終りの楽園。』(2001年)や『モーターサイクル・ダイアリーズ』(2004年)などで知られる彼は、キャリアも長く、出演作も多い。しかしハリウッドでの主演作となると、2005年の『キング 罪の王』以来だ。ラテン系の俳優に注目が集まっている今、実力派として知られる彼を起用することは、なんら不思議なことではないだろう。また、『オールド』で彼が演じるガイの妻プリスカを演じたのが、ルクセンブルク出身のヴィッキー・クリープスであることを見ると、アメリカにおける家族の人種やバックグラウンドの多様化についても考えさせられる。

Amazon Original Movie『シンデレラ』(c)Amazon Studios

 一方で、ラテン系の新人にもスポットが当たっている。9月にAmazon Prime Videで配信が開始された実写ミュージカル『シンデレラ』では、元フィフス・ハーモニーのカミラ・カベロが映画初出演にして初主演を務めた。キューバ生まれの彼女は、6歳のときにアメリカに移住してきた移民だ。2015年のディズニー実写版『シンデレラ』では、イギリス出身のリリー・ジェームズが同役を演じたことを考えると、まさに時代の流れを反映したキャスティングだと言えるだろう。お馴染みのおとぎ話を大胆に脚色した本作だが、やはり主人公の基本設定は変わらない。継母と2人の義姉に虐げられる少女だ。この設定は、シンデレラだけをラテン系の俳優が演じても違和感のないように優位に働いた。カベロは本作で素晴らしい歌声と演技を披露している。今後も俳優として活動をつづけていくかはわからないが、その活躍に期待したい。

 これまでラテン系をメインキャラクターとした有名なハリウッド映画といえば、『ウエスト・サイド物語』(1961年)くらいしかなかった。しかし同作でもプエルトリコ系であるはずのヒロイン、マリアはロシア系のナタリー・ウッドが演じている。『イン・ザ・ハイツ』の生みの親であるミランダは、同作を執筆した理由について、「舞台で自分たちのストーリーが語られるのが観たかった」と語る。圧倒的に白人の多かったエンターテインメント業界、そしてそこで生み出される作品も多様化が進み、ようやく“無視されてきた人々”の物語も語られるようになってきた。これはとても良い変化だ。映画をはじめとするエンターテインメントには、誰もが自分を投影できる存在を探している。ラテン系俳優たちの躍進が、今後もつづいていくように願いたい。

■配信情報
Amazon Original Movie『シンデレラ』
Amazon Prime Videoにて独占配信中
出演:カミラ・カベロ、イディナ・メンゼル、ミニー・ドライヴァー、ニコラス・ガリツィ、ビリ ー・ポーター、ピアース・ブロスナンほか
監督・脚本:ケイ・キャノン
プロデューサー:レオ・パールマン、ジェームズ・コーデン、ジョナサン・カディン、シャノン・マッキントッシュ
エグゼクティブプロデューサー:ルイス・ロズナー、ジョセフィン・ローズ
(c)Amazon Studios

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