Netflix韓国オリジナル作品の最高傑作!? 『D.P. -脱走兵追跡官-』が世界に提起する問題
さらに、彼が『D.P. -脱走兵追跡官-』に出演することを決めたのは、彼自身の強い意志が動いているのではないかと推測する。一般的に韓国の人々は政治や社会問題に対しても率直に意見を述べる傾向にあるが、俳優やミュージシャンなどにとっても、スタンスを明確にすることが今後のキャリアを大きく動かす要素となる。政治的に物議を醸すような役を引き受けることによって、批評家や社会的な評価を得やすくなるのだという。チョン・ヘインはドラマ配信後のインタビューで、役作りに兵役での経験を取り入れて「自分が二等兵だったときのことを思い出し、階級と名前を述べるときの声のトーンとボリュームについてよく考え、過去の記憶の全てを蘇らせて演じました」と語っている。そして、このドラマシリーズが大きな反響を得た理由をこう分析する。「人気の理由は、物語の強さにあると思います。軍隊は社会の小さな縮図です。真実を直視するのは簡単なことではありませんが、だからこそ強さがあると思うんです」(参考:https://www.soompi.com/article/1487079wpp/jung-hae-in-talks-about-the-success-and-realism-of-d-p-plans-for-a-second-season-and-more)。
韓国に限らず、世界の国々には徴兵制度があり、退役後もPTSDで苦しんでいる状況がある。さらには、チョン・ヘインが言うように、組織内いじめやトキシック・マスキュリニティ(有害な男らしさ)、家父長制などのジェンダー問題は、軍隊だけではなく社会全体が取り組まなくてはいけない問題だ。これらの問題を傍観し沈黙を貫くことは、加害と同じこと。原作・脚本のキム・ボトンとハン・ジュニ監督、そして肉体改造を経てアン・ジュノ二等兵になりきったチョン・ヘイン、バディを組んだハン・ホヨル(ク・ギョファン)、物語のテーマを牽引するチョ・ソクポン一等兵(チョ・ヒョンチョル)、憲兵隊の上官を演じたキム・ソンギョンとソン・ソックら俳優陣の真摯な演技によって、映像作品が社会に問題提起できる可能性を追求した作品だと言える。
■配信情報
Netflixオリジナルドラマ『D.P. -脱走兵追跡官- 』
Netflixにて独占配信中
(c)Blackaura
(c)C&B Photography