『おかえりモネ』清原果耶×坂口健太郎だから成立した“魂の抱擁” 菅波と百音の誠実な歩み

清原果耶×坂口健太郎だから成立した魂の抱擁

 9月3日に第80話が放送された、NHK 連続テレビ小説『おかえりモネ』。全120話の本作にとって、ちょうど物語の3分の2が終わったことになる。登場人物たちにも愛着が湧き、終盤の展開も気になる、“朝ドラファン”にとって、一番楽しいと言ってもいいこの時期。そんな気持ちに応えてくれるかのように、第80話では“大事件”が起きた。

 第15週では百音(清原果耶)の妹・未知(蒔田彩珠)と幼なじみの亮(永瀬廉)、第16週では三生(前田航基)と悠人(高田彪我)が東京にやってきた。第16週の物語の中心は東京に集まった気仙沼の幼なじみたちであり、特に初めて胸の内を明かした亮に涙した人も多かったことだろう。しかし、第80話の7分過ぎからの展開で、この週の主役は「菅波先生!」と思わず叫びたくなる展開が待ち受けていた。

 百音と菅波(坂口健太郎)は、最初は「ただ同じエリアで働く人」として、次第に「先生と生徒」として、東京に来てからは「互いの辛い過去も打ち明けられる仲」として、物理的な距離も心の距離も、少しずつ縮めてきた。

 すでに傍から見れば“恋人同士”と言ってもいい関係になっていた2人。未知が撮ったツーショット写真もこれ以上ないほどのお似合いぶり。ただ、本人たちが互いの思いをはっきりと言葉にすることはなく、態度にも示すことはこれまでなかった。そんな2人が、ある種、愛をも超えた“魂の抱擁”を果たす。

 これまで「洗濯をする」という理由を付けてコインランドリーに来ていた菅波が、「あなたに会いに来た」という直球の言葉を百音にぶつける。この時点でこれまでと違う菅波の言葉にドキっとしてしまったが、続けて放たれた「これでも動揺しているんですよ、昨日から」にはノックアウトされた。常に理性的だった菅波が、百音と亮の関係を頭では理解しながらも心で整理できていないことを明かしたからだ。

 数多く作られてきたラブコメ作品のように、ここではっきりと「好きだ」と言葉にして、晴れて結ばれる、という展開にもすることもできたと思う。それはそれで盛り上がったかもしれない。しかし、安達奈緒子脚本はそう物語を単純化しない。菅波は百音と出会って自分が変わったことを告げ、百音の抱えてきたことを受け止めたいと語る。「好きだ」と自分の思いをある種、一方的に伝えるのではなく、あなたを受け止めると。

 百音は百音で菅波が東京からいなくなることを知り、動揺する中でも、自分が亮にとった態度を振り返り、「先生が目の前からいなくなっちゃうの嫌だと思ってるんです」という自分は駄目だと冷静になろうとする。そんな思いが菅波のことを縛ると理解しているからだ。

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