音尾琢真、滝藤賢一、中村獅童 “強面ベテラン俳優”たちの『孤狼の血 LEVEL2』での功績

“強面ベテラン俳優”の『孤狼の血』での功績

 若手からベテランにいたるまで、とにもかくにもクセモノ俳優が勢揃いしている映画『孤狼の血 LEVEL2』。そんな面々の中でもここでは、本作を支え、盛り上げ、大いにかき回している“強面ベテラン俳優”の3人ーー音尾琢真、滝藤賢一、中村獅童らの功績に注目したい。

音尾琢真(吉田滋役)

 2018年に公開された前作『孤狼の血』に引き続き、この『孤狼の血 LEVEL2』にも出演している音尾琢真。彼が演じる吉田滋は、前作ではとある暴力団の構成員であったが、今作で描かれるのは3年後の物語だ。彼を取り巻く環境はもちろん、とうの吉田自身も変化。堅気となって建設会社を設立し、“イチから”やり直している模様。しかし、鈴木亮平演じる上林が率いる組の者たちに乗っ取られてしまう。なんとも不憫な男である。この役で音尾が担っているのは、ある種のコメディリリーフ的存在。物語が物語なだけに、スクリーンに映し出される事象が事象なだけに、声を上げて笑えるようなものではないが、ハイスピードで展開していく物語の緩急に、彼は“緩さ”を与えている。さすが、本作を監督した白石和彌監督作品常連俳優の音尾だからこそ担えるポジション。『日本で一番悪い奴ら』(2016年)、「日活ロマンポルノ・リブート・プロジェクト」の一作である『牝猫たち』(2017年)、『サニー/32』(2018年)、『凪待ち』(2019年)、『ひとよ』(2019年)などなど、物語の“核”となる人物ではなくとも、“核に触れる”役どころに配され、白石作品の世界観の構築に一役買ってきた。そのキャリアを、今回またも更新したはずだ。

滝藤賢一(嵯峨大輔役)

 滝藤賢一もまた、音尾琢真と同じく続投組。演じているのは広島県警本部・捜査一課管理官の嵯峨大輔だ。警察のなかでも大いなる力を握っている男であり、暴力団の荒くれ者たちと対峙する主人公にとって、彼もまた敵対する存在である。演じる滝藤の眼光はいつも以上に鋭く、吐き出すセリフの一つひとつは両刃のナイフのよう。彼の出番の尺でいえば、そこまで多い方ではないだろう。そもそも本作は、30名にも及ぶメインキャストたちが火花を散らし合う。そこに前作の出演者たちの影もチラつくため、感覚的なボリュームは非常に大きい。それでも滝藤演じる嵯峨大輔の印象が強く残るのはなぜかーー。その理由の一つはもちろん、彼がそれだけ優れた演じ手だということだが、もう少し具体的に掘り下げてみたい。主人公は、おびただしい数の荒くれ者たちを相手にしている。それらと対極にありながら、これまた主人公と敵対関係にあるのが嵯峨大輔だ。つまり、「∞」に存在しているように思えるヤクザに対して、嵯峨は「1」。主人公にとってこの「∞」と「1」が“拮抗”していなければ、本作の緊張感は物足りないものになるかもしれない。演じる滝藤はたった一人で、この重要な存在を全うしているのだ。これは作品全体のトーンも意識して演じなければならないポジションであるはずなだけに、改めて本作における“滝藤賢一=嵯峨大輔”の貢献度の大きさを感じる。

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