「懐かしいのにどこか新しい」 甲斐みのり×網中いづる、『スザンヌ、16歳』の魅力を語る
本作のテーマのひとつが誰もが経験する“思春期”とどう向き合うか。脚本・監督・主演のランドンは次のように語っている。
「両親や友人と一緒に楽しく過ごしていましたが、ある種の憂鬱感があって、それが何なのか説明できなかったんです。そして、これは自分がいま経験している思春期と関係があるんじゃないだろうかと考えました。人生における微妙な時期です。自分自身を本当に理解し、自分が何者なのかを知る前に、新しい物事や、感覚、感情を知ってしまう時期ですから。そのうえ、私は恋愛にとても興味があって、恋してみたいと強く願っていました。恋をしたいという気持ちが強かったんです。まだ経験したことのない恋愛感情というものに好奇心でいっぱいでした。(中略)それで少しずつ、自分が経験してみたいラブストーリーを書き出しました。この物語は何かしらの倦怠感、他者と共にいることの難しさを語っています」(参照:MOVIEcollection「『スザンヌ、16歳』スザンヌ・ランドン監督インタビュー」)
甲斐は彼女の言葉を受け、改めて本作を通して感じたものを次のように語る。
「私も何者でもない自分に10代の頃は悩んでいました。でも、今思えば何者でもない人なんていないという答えにたどり着くのですが、これは10代の頃には分からなかったことで。スザンヌが歳上の男性に惹かれたのも、自分にはない完璧な大人に見えたからですよね。でも、今の年齢の私が本作を観ると、“完璧ではない世界”を観ることによって今の自分がまたす救われることに繋がっていたんです。10代の自分と今の自分をつなげてくれた気がします」
網中は、「自分の思春期はもう古くなってしまって……(笑)」と笑いながら語りつつ、「色んなものに怒っていたように思います。地方で暮らしていたので、都会や外国に対する憧れはとてもありましたし、『楽しかった〜!』という思いよりも、いろんなものへの嫉妬や苛立ちの方が多かったように思いますね。スザンヌはそれを自分で理解して映画にしているのがすごいですね」と述べた
最後に、甲斐は「先日放送されていた『大豆田とわ子と三人の元夫』(カンテレ・フジテレビ系)でも描かれていましたが、幸せとか不幸は他人に決められるものではないんですよね。スザンヌは自分で選択することができる、自分で幸せを掴みとることができる女性。だから、本作は観終わったときに気持ちいいんだなと。スザンヌの意思の強さと格好よさを注目して観てほしいですね」と締めくくった。
■公開情報
『スザンヌ、16歳』
全国順次公開中
監督・脚本:スザンヌ・ランドン
出演:スザンヌ・ランドン、アルノー・ヴァロワ、フレデリク・ピエロ、フロランス・ヴィアラ、レベッカ・マルデール
編集:パスカル・シャヴァンス
音楽:ヴァンサン・ドレルム
配給:太秦
2020年/フランス/73分/原題:16 Printemps(Seize Printemps)
公式サイト:suzanne16.com