中村佳穂、幾田りら、アヴちゃん アーティストの声優活動にみる“歌と声”の深い関係

中村佳穂らアーティストの声優活動を分析

歌や音楽を、セリフや演技に変換できる能力を持った幾田りら

 ほかにも、『ソウルフル・ワールド』では“歌う男”役を、「香水」がヒットした瑛人が演じた。ニューヨークの地下鉄のホームで弾き語りをするストリートミュージシャンの役で劇中では「愛に満ちた世界」という楽曲を歌っている。『SING/シング』では、原作では学生時代に歌唱コンテストにて優勝した経験を持つタロン・エガートンが演じた、ピアノの弾き語りをするゴリラの少年ジョニーを、スキマスイッチの大橋卓弥が演じた。いずれもカメオ的な話題性込みでの出演ながら、抜群の歌とともにいい味を出していた。

「ソウルフル・ワールド」|「愛に満ちた世界」performed by 瑛人|ディズニープラス(Disney+)で配信中

 また、2022年初夏に全国ロードショー予定の映画『犬王』は、犬王役をロックバンド・女王蜂のアヴちゃんが演じることが話題を呼んだ。同作は、NHK連続テレビ小説『あまちゃん』や大河ドラマ『いだてん』の音楽担当でも知られる、大友良英が音楽を手がけるミュージカルアニメーション作品。アヴちゃんは、ミュージカル『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ』への出演経験があり、7月に公開されたティザーでも存在感のある個性的な歌声を聴かせて話題を集めた。これはきっと、誰もが納得のキャスティングだと言える。

劇場アニメーション『犬王』特報 2022年初夏全国ロードショー!

 歌がキーワードになっている劇場アニメ映画の場合、演者が歌唱シーンも担う場合が多いため、歌唱力はキャスティングの大きな鍵となる。映画監督は、演技指導はできても歌の指導はできない。歌が重要な役どころであればあるほど、プロのシンガーに目を向けるのは至極当然のことと言える。

 しかし、歌と演技は全くの無関係とは言い切れない面もある。前述の『news zero』の特番で、幾田りらは「声という共通点がある中で自分がどこまでできるか、期待とワクワク、不安もあった」と語った。シンガーの多くは提供された歌詞を歌う際に、歌詞の主人公を演じる気持ちで歌うと言う。その観点で言うと、セリフはリズムであり、言葉のイントネーションはメロディであると言い換えることもできる。要は、声という共通点をどう置き換えるかだ。

 実際に歌や音楽を、セリフや演技に変換できる能力を持った歌手/アーティストは多く、福山雅治やシシドカフカ、中島美嘉、山崎まさよしなど。菅田将暉や松たか子など逆もしかり。それは、声優としても同様のことが言えるだろう。その点で、『竜とそばかすの姫』で歌うシーンが無いにも関わらず演技で存在感を発揮した幾田りらは、掘り出しものだった。

■公開情報
『竜とそばかすの姫』
全国東宝系にて公開中
監督・脚本・原作:細田守
声の出演:中村佳穂、成田凌、染谷将太、玉城ティナ、幾田りら、森川智之、津田健次郎、小山茉美、宮野真守、役所広司ほか
企画・制作:スタジオ地図
製作幹事:スタジオ地図有限責任事業組合(LLP)・日本テレビ放送網共同幹事
配給:東宝
(c)2021 スタジオ地図
公式サイト:https://ryu-to-sobakasu-no-hime.jp/
公式Twitter:https://twitter.com/studio_chizu/
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