中村佳穂、幾田りら、アヴちゃん アーティストの声優活動にみる“歌と声”の深い関係

中村佳穂らアーティストの声優活動を分析

 細田守監督の3年ぶり新作『竜とそばかすの姫』で、主人公・すず/ベル役に、演技未経験のシンガーソングライターの中村佳穂が抜擢された。また、すずの親友のヒロちゃん役を務めたのは、YOASOBIのボーカルである幾田りら。これまでにも『ソウルフル・ワールド』に瑛人、『SING/シング』にスキマスイッチの大橋卓弥が出演するなど相次ぐ歌手/アーティストの声優活動。その意義と可能性を考えたい。

演技未経験を逆手に取って内向的なすず役を好演

 京都出身のシンガーソングライターである中村佳穂は、20歳の頃から音楽活動を始め、2018年に自身のレーベル「AINOU」を立ち上げて活動。これまでにgroup_inouや蓮沼執太などアーティストとコラボを繰り広げているほか、RHYMESTER主催の『人間交差点2019』や
『FUJI ROCK FESTIVAL ’19』など大型イベントに出演し、2019年に放送された『関ジャム 完全燃SHOW』(テレビ朝日系)の企画で、楽曲が紹介されたことも話題になった。一般的にはほぼ無名だったが、もともと抜群の歌唱力が音楽業界では一目置かれていた。

 中村が演じるのは、母親の死をきっかけに歌が上手く歌えなくなってしまった主人公のすず。仮想世界「U(ユー)」の中では歌姫ベルとして絶大な人気を集める役だ。King Gnuやmillennium paradeなどで活躍する音楽家の常田大希が手がけるメインテーマ「U」は、壮大なスケール感で、中村の祝祭感と高揚感にあふれたボーカルが聴く者を圧倒する。一方、中村自身が作詞を手がけた劇中歌「歌よ」などでは、どこか寂しげな雰囲気ながら美しく繊細な歌声を聴かせている。歌がキーとなる作品でもあることから、キャスティングは歌の上手さもポイントになった。オーディションでは中村の歌声を、細田監督を始めとしたスタッフ全員が絶賛したそう。

 では、声優としての演技はどうだったのか。すずは、過去のトラウマで失敗した経験があったり、何かを言おうとして言いよどむシーンもあるなど、どこかオドオドとした印象だ。もちろん演技指導もあったろうが、演技未経験であったことが、かえって内向的なすずのキャラクターにマッチしたと言える。現実世界での自分に自信の無い雰囲気のすずと、「U」の世界で自身たっぷりに自分を表現するベルとのギャップという表現は、演技未経験のシンガーソングライターである中村佳穂だからこそできたものだろう。

 また、声優としてのポテンシャルの高さを発揮したのは、中村同様に演技未経験で声優にチャレンジした、YOASOBIの幾田りらだ。幾田は、すずの親友で、すずを「U」の世界へと誘い、ベルとしてプロデュースするヒロちゃんを好演した。映画を見た後で幾田だと知り、意外なハマり役だったことに驚いた人も多いだろう。ヒロちゃんは、ネットを使いこなす毒舌メガネ女子で、早口でまくしたてるようにしゃべるのが特徴。YOASOBIの楽曲も、実際に歌おうとすると早口で息が続かない曲が多数ある。歌もしゃべりも早口は得意のようだ。

 『news zero』(日本テレビ系)の特番では、食事のシーンでようかんを食べながら役作りをしたことや、シンガーならではのタイム感の正確さが取り上げられた。また、中学の時に親友が女優になる手助けをしたことがあり、ヒロちゃんにシンパシーを感じて演じたことも明かしている。



インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「アクター分析」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる