『東京リベンジャーズ』ヒナ&ナオトにみるキャスティングの妙 実写版とアニメ版を比較
ヒナの弟が橘直人である。タケミチのタイムリープの仕掛け人であり、時間軸上で「現代」にいて全てを知る男がナオトだ。『バック・トゥ・ザ・フューチャー』のドク(クリストファー・ロイド)のポジションがわかりやすいかもしれない。タケミチが過去を変えたことによって、ナオトは現代で生き延び、ヒナを救うためにタケミチと力を合わせる。
年齢に似合わない大人びた態度がナオトの特徴である。運命を知ったことがナオトを大人に変えた。ダメ人間になってしまったタケミチと違って、姉を救うためナオトは警官になる。クールな見た目に反して、姉を救いたいと願うナオトの必死さが、不可能と思えるタイムリープの原動力になっている。
アニメ版の声優は逢坂良太で、これは本作のベストキャストの一つである。『進撃の巨人』、『ダイヤのA』、『四月は君の嘘』などメジャー作品に縁が深い逢坂には、少年漫画の主人公がよく似合う。ヒーロー役を任せられる安定感に加えて、そこはかとなく漂う色気とピュアネスは『赤髪の白雪姫』のゼンや『夢色キャスト』の朝日奈響也を見れば一目瞭然だ。
“主人公ボイス”の逢坂は、普通に考えればタケミチや東卍の幹部の誰かが自然だろう。そこをあえてナオト役にしたところに制作陣の深い意図を感じる。主要男性キャラでは唯一と言っていい堅気で、タイムリープのスイッチを押す役割のナオトは、「泣き虫のヒーロー」を助ける陰のヒーローだからだ。ナオトは自らの生死をタケミチの手にゆだねつつ、未来からその手を握り返す。その姿は、逢坂が『ハイキュー!!』で演じた沈着冷静なセッター赤葦にも重なる。
杉野遥亮については、あえて多言を要しないだろう。単なる“イケメン俳優”という看板は『直ちゃんは小学三年生』(テレビ東京)、『花王 アタックZERO』CM、『東京怪奇酒』(テレビ東京系)を経て崩れ去った。様々なタイプの役どころを演じ切れることを証明してきた杉野。今はもう彼が何を演じても驚かない。それは学ランを着た中学生でも、ちょっと角度キツめな若手刑事でもである。『東京リベンジャーズ』ナオト役の杉野は粛々と任務を遂行する。それでも時折りすました横顔に笑みが浮かぶのは、同年代が集結した本作への参加を喜ぶ気持ちと無関係ではないはずだ。
■石河コウヘイ
エンタメライター、「じっちゃんの名にかけて」。東京辺境で音楽やドラマについての文章を書いています。ブログ/Twitter
■公開情報
『東京リベンジャーズ』
全国公開中
出演:北村匠海、山田裕貴、杉野遥亮、今田美桜、鈴木伸之、眞栄田郷敦、清水尋也、磯村勇斗、間宮祥太朗、吉沢亮
原作:和久井健『東京卍リベンジャーズ』(講談社『週刊少年マガジン』連載中)
監督:英勉
脚本:高橋泉
配給:ワーナー・ブラザース映画
(c)和久井健/講談社 (c)2020 映画「東京リベンジャーズ」製作委員会
公式サイト:tokyo-revengers.jp
公式Twitter:@revengers_movie
公式Instagram:@revengers_movie
■放送情報
『東京リベンジャーズ』
MBSにて、毎週土曜26:08~放送中
テレビ東京、テレビ愛知、テレビ北海道ににて、毎週日曜25:35~放送中
TVQにて、毎週日曜26:35~放送中
BS朝日にて、毎週日曜23:00〜放送中
ほか各局放送中
※放送日時は変更となる場合あり
声の出演:新祐樹、和氣あず未、逢坂良太、林勇、鈴木達央、水中雅章、松岡禎丞、木村昴、野津山幸宏、河西健吾、小野大輔、寺島拓篤、広瀬裕也、武内駿輔、葉山翔太、日野聡、竹内栄治ほか
原作:和久井健『東京卍リベンジャーズ』(講談社『週刊少年マガジン』連載)
監督:初見浩一
シリーズ構成:むとうやすゆき
キャラクターデザイン:大貫健一/太田恵子
音響監督:飯田里樹
音楽:堤博明
アニメーション制作:ライデンフィルム
(c)和久井健・講談社/アニメ「東京リベンジャーズ」製作委員会
公式サイト:https://tokyo-revengers-anime.com