『賢い医師生活』シーズン2第4話、チョン・ギョンホの熱さが牽引するジュンワンの変化
『賢い医師生活』シーズン1では、5人の医師の学生時代をフラッシュバックさせながら彼らの人柄と結束、そして40代を迎える世代の仕事と生活を描いていた。ところが、シーズン2に入り4話目を数えても、学生時代のエピソードが語られることはない。同じ脚本家・演出家コンビによる『応答せよ』シリーズが、現在の自分たちを築いた過去を振り返り人生のレッスンを反芻する物語だったことに比べ、『刑務所のルールブック』(原題訳『賢い監房生活』)からの『賢い』シリーズは、他者との関係から気付きを得る人間の善い部分を浮き彫りにする。過去を描かないことがシーズン2を作る上での前提と心構え、そしてシーズン3の制作を現時点では“未定”とした理由だと仮定して、第4話を読み解いてみよう。
分院と本院を行き来して診療するソンファ(チョン・ミド)は、レジデントのソンビン(ハ・ユンギョン)の論文指導を行う傍ら、人間関係と職務において緩急をつけて信念を貫く大切さを教える。双方向のコミュニケーションで築く関係と、責任を持って最善を尽くす状況には違いがある。ソッキョン(キム・デミョン)は、レジデントたちとのランチの輪に違和感なく入れるようになっている。英国留学中のイクスン(クァク・ソニョン)とジュンワン(チョン・ギョンホ)の間に物理的距離以上の隔たりが生じ、明らかに憔悴している高校時代からの友人を心配するイクジュン(チョ・ジョンソク)。イクジュンは妹のイクスンからの電話で、二重の衝撃を受ける。
連続ドラマには、シリアル(連続もの)とエピソディック(1話完結)の2種類がある。連続ものにはシーズンを通じ、もしくはドラマ全体を貫くコンフリクト(衝突)があり、起承転結の曲線を描きながら進んでいく。1話完結の連続ドラマは、登場人物やテーマを共通させながら、エピソード内で起承転結と問題解決を描く。プロデューサー・監督のシン・ウォンホ氏は昨年の放映後インタビューで、シーズン制を導入するにあたり、「全話を貫く大きなプロットラインではなく、小さな物語を積み重ねる構成にした。このドラマは私たちにとっても大きな挑戦だった」と述べている。『賢い医師生活』シーズン1では、エピソード内で患者の診療や手術を描く1話完結構成を導入しながら、合間に5人の医師が医大入学と同時に出会い、音楽を通じて友情を育む過程がフラッシュバックで描かれていた。医師たちが私生活で抱える葛藤や問題を12話全体に流れるプロットラインとし、最終話でいくつかの解決とクリフハンガーを残してシーズン2へ継続させた。
だが、シーズン2では第1話に登場した心臓外科医のジュンワンの患者の親たちのエピソードが第4話まで継続して描かれている。産婦人科医ソッキョンが診ていた妊婦も、脳神経外科医ソンファが手術したバイオリニストのエピソードも複数話にまたがる。一方で、進行中のそれぞれの恋愛や指導するレジデントとの関係は細切れのエピソードとして、そこに至るまでの過程は描かれない。フラッシュバックが描かれなくなり、バンド演奏シーンの扱いも変わっている。
今週のバンド演奏曲は、「Let’s Forget It(もう、忘れることにしましょう)」。韓国のフォークブームを牽引したシンガーの1人、イ・ジャンヒが1974年に発表した楽曲で、その後何度もカバーされている。『恋のスケッチ ~応答せよ1988~』でも、Melody Dayのヨウンによるバージョンが使用されていた。
「Let’s Forget It」では、胸部外科医ジュンワンを演じるチョン・ギョンホが一部でボーカルをとっている。著名ドラマプロデューサーを父に持つチョン・ギョンホはドラマ・映画の出演作が多く、『愛の不時着』にもユン・セリの元ボーイフレンド役でカメオ出演している。ミュージカル出演の経験がある共演の4人とは異なり映像作品中心で活躍してきたが、『悪魔がお前の名前を呼ぶ時』(2019年)で演じたミュージシャン役のためにギターと歌を特訓したという。シン・ウォンホ監督の『刑務所のルールブック』(2017年)では、過剰防衛で罪に問われた野球選手ジェヒョク(パク・ヘス)の親友で刑務官のジュノを演じている。その縁で『賢い医師生活』への出演を志願していたが、俳優が持つ性格や背景と役柄との相性を重要視するシン・ウォンホ監督と脚本家のイ・ウジョン氏には迷いがあった。実際のチョン・ギョンホとは全く異なる「言葉で息の根を止められる」厳しい胸部外科医のジュンワン役を預けると、常に早足の歩き方や減量で、頭で考えるよりも先に言葉や行動に出てしまうハートに忠実な医師役を作り上げていった。
第4話では、補助人工心臓を5ヶ月間付けて移植を待っている子どもの母親に、難しい手術前なのに「今日は何があっても助けます」と言ってしまう。チョン・ギョンホ本人が持つ熱さが役柄に逆流入し、以前は医師として「最善を尽くします」以上の発言を避けてきたジュンワンが一線を超え変化しているかのように。