『Mine』は新しい時代の女性たちを描く 韓国ドラマ定番の財閥ドロドロサスペンス

『Mine』は新しい時代の女性たちを描く

あなたの守りたいものは?

 「ここで見聞きしたことは決して口外しないように」とメイドたちに箝口令が出るように、ヒョウォングループには秘密が多い。そのなかでもソヒョンが頑なに守り抜いてきた秘密が、セクシャルマイノリティーである自分自身のことだ。

 そしてヒスもまた、ある秘密を抱えていた。それは息子・ハジュンが傷つかないようにと、自分が実の母ではないことを世間には発表せずにいたこと。愛情を持って育ててきた時間こそが、血は繋がりを超えた親子の絆になっているのだと信じて。

 生まれながらの貴族であるソヒョンにとって、結婚は家と家とを繋ぐもの。どんなに恋しい女性がいたとしても、自分の感情を隠して家を守ることに徹底してきた。だが、ヒスの「血縁」を超えた感情で繋がろうという姿勢が、ソヒョンの心を突き動かす。そして、ヒスもまた、ソヒョンの「大切なものを守る」という強い信念に鼓舞されていく。

 困難に血を流してでも立ち向かう凛々しさと、愛する者のために流す涙の繊細さ。W主演を務めたキム・ソヒョンとイ・ボヨンの、強い眼差しと切ない表情が、1人の人間の中にも混在する複雑な部分を見事に表現していた。

 なかでも印象的なシーンがある。自分を生きづらくしている壁は、もしかしたら離れて見れば小さな囲いでしかないかもしれないと、アートを通じてソヒョンが気づきを得る場面だ。その重苦しい壁が延々と続いているという先入観から解放されるさまは、見ているこちらまでスッと心に風が抜けたような気分に。今、私たち自身が感じている壁も突破できるのではないかという勇気が湧いてくる。

 そして、ソヒョンとヒスを中心に、女性たちが手を取り合っていく様子は、まるでSNSである特定の悲しみや苦悩に共感して繋がっていくコミュニティのようだ。自分自身のために戦おうというとき「私が守るから全部好きなようにして」と味方をしてくれる存在がいることのなんと心強いことか。このドラマそのものが、視聴者にとってのその“味方“となってくれる感覚を覚える。

 新しい時代の女性たちを描くという大きな扉と開けた本作。一方で、そのテーマが成り立つほどに、まだまだしがらみが多い社会でもあるということも実感する。願わくば、誰もがその脅威から解放され、大切な“mine”を守ることができる世の中になるように。女性たちの奮闘の先に広がる、新たな物語に期待したい。

■配信情報
『Mine』
Netflixにて独占配信中
写真はtvN公式サイトより

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