『おかえりモネ』サヤカの言葉から感じた世代交代 百音が大人になる過程描いた回に
その後のサヤカ(夏木マリ)と龍己(藤竜也)の電話のやりとりも非常に印象的である。龍己に「植樹祭、今年もやりたかったでしょう?」と尋ねられたサヤカは「また気が向いたらやればいい。それに、次の世代はもう育っているから」と答える。百音も未知も次の世代として仙台や日本の人々の助けになる仕事に就こうとしているのだ。大人たちがこうした世代交代を意識することが、若い人たちの成長を考える上で最も重要ではないだろうか。
20歳の誕生日を迎えて文字通り大人になった百音は、サヤカと初めて飲むお酒を飲み交わすことで、彼女から何かを託されたかのように思えた。初めて飲んだお酒の味がよくわからない、という百音。そう、最初は何事もよくわからないし、今日から成人ですなんて言われても、実感なんてわかない。それでも、彼女が森林組合での仕事に慣れていき実績を積んできたように、気がつけば何かはできるようになるし、“大人”っていうものになれるのではないだろうか。
夏に受けた試験の結果が届くものの、結果は不合格。百音は、少し不安そうな表情で、壁にはってある写真を見つめる。森林組合の写真と空の写真が交互に映し出されていることから、“2回試験を受けて落ちたのだから、もう諦めてこれまでのように森林組合の仕事を全うして生きていくか、それでもやっぱり起床予報士にはなりたくて”……という彼女の葛藤がうかがえた。妹の未知は自分のやりたいことが一本道でわかっている分、百音は姉としての焦燥感もあるのかもしれない。しかし、大丈夫。まだ百音には将来のことを迷う時間がたくさんある。そして迷ったからこそ、先に進めるようになるのだ。それが、“大人”なのである。
■アナイス(ANAIS)
映画ライター。幼少期はQueenを聞きながら化石掘りをして過ごした、恐竜とポップカルチャーをこよなく愛するナードなミックス。レビューやコラム、インタビュー記事を執筆する。Instagram/Twitter
■放送情報
NHK連続テレビ小説『おかえりモネ』
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45、(再放送)11:00 〜11:15
※土曜は1週間を振り返り
出演:清原果耶、内野聖陽、鈴木京香、蒔田彩珠、藤竜也、竹下景子、夏木マリ、坂口健太郎、浜野謙太、でんでん、西島秀俊、永瀬廉、恒松祐里、前田航基、高田彪我、浅野忠信ほか
脚本:安達奈緒子
制作統括:吉永証、須崎岳
プロデューサー:上田明子
演出:一木正恵、梶原登城、桑野智宏、津田温子ほか
写真提供=NHK