塩塚モエカ×小川紗良×甲田まひる×河合優実が語り合う、異色のSF作で築いた信頼関係

塩塚×小川×甲田×河合が語り合う

“忘れがちだけど大切なこと”

――そんな音楽も含め、キャストのみなさんが違うジャンルで活躍されているので、お互い刺激になったのでは?

塩塚:マッピー(甲田)のピアノを聴いて、私は電子ピアノを買いました(笑)。かっこよすぎて。

甲田:やばっ! 嬉しい。でも私、ギターはできないんだなぁ(笑)。私は優実ちゃんのダンスを見たことがないから、見てみたいです。

河合:じゃあ、次は私が覚醒するっていうシーンをお願いします(笑)。

塩塚:私の場合、前に紗良さんと一緒だった時は、紗良さんが監督さんだったからね。

小川:そうだね。5年くらい前に映画祭のオープニングムービーを撮った時に、私が監督で、塩塚さんがキャストで出ていたんです。今度は共演者だったので、不思議な感じがしました。

甲田:そのときは、演技もしたの?

塩塚:MVみたいな感じかな。演奏シーンもなくて、走ったりとか。

河合:監督の時の紗良さんは、どんな感じですか?「はい、カットー! もう一回!!」みたいな?

塩塚:それは、ないない(笑)。でも、同い年なのにすごくしっかりしてるなって思いました。大学生なのにその場を仕切っていて、私はぜんぜんバンドを仕切れていなくて(笑)。

小川:ジャンルは違うけど、お互い大学に行きながら活動していたし、映画も好きだったりして。映画館で会ったこともあるよね?

塩塚:私、映画館でバイトしてたんです。紗良さんのチラシが置いてあったりもしたので、勝手にシンパシーを感じるというか、見ていて「自分もがんばろう」と思える存在でした。

――お話を聞いていて、和気あいあいと楽しい現場だったんだろうなと想像します。

甲田:ずっと笑ってたよね。休憩中は、私の発案で手遊びみたいなゲームをよくやっていました。やりたいな~と思ったら、我慢できなくなっちゃうんです(笑)。撮影では、宇宙人3人で海岸に流れ着く場面があるんですけど、あのシーンは寒すぎて笑っちゃいました。「“風邪の引き方”って検索したら、これが出てくるよね」って言いながら(笑)。

河合:風邪を引く実践動画ね(笑)。

小川:寒すぎて笑いが止まらなくて、お湯をかけてもらって(笑)。

河合:無事、誰も風邪を引かなくてよかったです(笑)。

塩塚:過酷なシーンは結構あったよね。私は砂浜で、縛り付けられて倒されるっていう(笑)。

小川:3人で「かわいそう~」って(笑)。砂丘を歩くシーンもあったんですけど、それもかなり大変でした。カメラマンさんがバテちゃってね?

河合:そうそう。本当に撮れなくなっちゃって、1カットだけ照明さんが撮ってるんです。

山本:本当に過酷だったと思います(苦笑)。

塩塚:でも、絶対に綺麗なシーンになるだろうなって思いました。

――「絶対にいいシーンになるから、がんばれる」みたいなところですかね?

全員:(大きく頷き)本当にそう!

小川:モニターを見ながら、絶対おもしろくなるなっていう実感もありました。

――ちなみに、監督のお気に入りのシーンは?

山本:僕にとっては毎話ハイライトなんですけど、みなさんの表情を映した寄りのカットが好きですね。塩塚さんは、最後の通信機のシーン。小川さんは、真鯛を観察しているシーン。河合さんは、みんなを窓越しに見ながらひとりで通信しているシーン。甲田さんは、麦が去った後に麦を睨みつけるシーンがあるんですけど、それがポップで。苛立ちの中に、甲田さん特有の表情が出ているなと思いました。

――初挑戦のことも多い本作を通して、女優としての成長も感じますか?

河合:私は本読みが印象に残っています。はじめに「感情は置いておいて、まず読んでみてください」と言われて、不安もありました。でも、今振り返ってみると「そういうことだったんだ」と、腑に落ちるような本読みだったなと思います。

小川:監督から「手紙を読むようにやってほしい」と言われたんです。私も、今までのどの本読みよりも納得できたし、「こうすればいいんだ」って、すごくよくわかりました。これからも自主的に他の作品でもやろうと思いましたし、演出の面でも勉強になりました。

甲田:最初に読んだときは、「もうちょっと感情を抑えてください」と言われるような本読みで。私も「手紙を読むように」っていうのはすごく意識していたし、印象に残っていますね。

塩塚:私は「演技ってわかんないわ」というところからのスタートだったけど、現場が楽しくて、(撮影をした)4日間がいい思い出になりました。今まで、長く掛け合うようなシーンを経験したことがなかったので、「お互いの空気感で演技が変わっていく」って、こういうことなんだ、と。女優として成長できたかはわからないけど、みんなの演技を見て、こう動けばいいんだっていうのを感じながらやっていました。

――ちなみに今作を通じて、自分が“人間”であることに対して、思いの変化などはありましたか?

塩塚:(目の前にあるものを指さして)これがお茶で、これがスマホで、この気持ちは恋で、というのは、自分が人間という括りでで生きているから当たり前だけど、宇宙人にとっては全部が新鮮なんだっていう視点の切り替えは、みんなの話を聞いていて改めて感じますね。

河合:まさにそういうことは節々で感じていました。宇宙人目線で見て、初めて気づくっていうか。砂浜に寝ていて初めて起き上がるシーンで、眼球を動かしている、空が見える、手がある……って、初めて自分が「体を持っている」と感じたかもしれないです。まずは体を持って、その中に心があるのが人間なんだって。

小川:クランクアップの時にお花をいただいて、それを花瓶に入れたときに、すごくしみじみしました。昨日も花の苗を植えたんですけど、小さな幸せというか、小さな豊かさみたいなものに、宇宙人役をやったことで、より目がいくようになったと思います。

甲田:最後に宇宙に帰ろうとするシーンで、梅ちゃんは「お別れが言いたい」と思うんですけど、たった数カ月しか地球で生活していないのに、そういう感情が生まれるんだ、と思って。その環境から吸収するものって本当にたくさんあって、私自身もまだ、人間の感情の全部は知らないんだろうなと思いました。

――ありがとうございます。最後に、視聴者へメッセージをお願いします。

山本:各話ごとに起承転結をしっかりさせて、どの話を観ても充実した気持ちになれるようにしよう、と意識して作りました。SFではあるんですけど、生活を描いた作品です。自分たちの普遍的な生活を、ちょっとだけ新しい角度から見られるように作ったつもりなので、このドラマを観た次の日に、ちょっと視点を変えて生活してもらうことができたらと思っています。

塩塚:ところどころに、“忘れがちだけど大切なこと”が出てきて、それが宇宙人の視点だからお説教くさくもなくて。そういうものが、観てくださる方に入っていったり、暮らしを考えるきっかけになったりしたら、おもしろいなと思います。

小川:今、ネットで観られる映像が増えている中でも、稀有な作品というか。テンポ感だったり、作品のトーンも独特で、実は攻めた作品だと思うんです。だから、ふだんYouTubeとかでドラマを観ている人も、新鮮さがあると思うし、スピード感とか、技術的な目新しさだけじゃなくて、こういう楽しさ、奥ゆかしさみたいなものがあるっていうことが、伝わったらいいなと思います。

河合:YouTube作品ということで、映画とかとは違って、自分が観ようとしていなくても出会えることがあると思います。たまたま目に留まった方にも、素敵な景色だったり、セリフだったりを届けられるところが、いいなぁと思っていて。スクルドと交信するように、ピピピピッと刷り込んでいける力がある作品だと思うので、ちょっとでも心に残る要素があれば、とっても嬉しいです。

甲田:みんなのコメントが素敵すぎて、私も本当にそう思います! って感じなんですけど(笑)。お話の中に、ちっちゃな幸せとか、悩みとか、誰にでもあるようなことが散りばめられています。どの登場人物の視点で観るかによって感じ方が違うと思うし、毎回気づくことがあるので、何回も観たくなる作品です。「自分の好きなことを貫く気持ち」とか、重なるところがある方も多いと思うので、自分なりの楽しみ方で観てもらえたらいいなと思っています。

■配信情報
『惑星サザーランドへようこそ』
「みせたいすがた」YouTubeチャンネルにて、毎週金曜20:00に公開予定(全5話)
出演:塩塚モエカ(羊文学)、小川紗良、甲田まひる、河合優実、大下ヒロト
監督・原案:山本英
脚本・原案:イ・ナウォン
プロデューサー:谷崎洋志
企画・プロデュース:五十嵐夏輝(ソニー・ミュージックレーベルズ)、須藤一希(ソニー・ミュージックエンタテインメント)
製作著作:ソニー・ミュージックエンタテインメント
「みせたいすがた」YouTubeチャンネル:https://www.youtube.com/channel/UCgoauVsYEJQB95TBOflEG0Q

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