浜野謙太、俳優として個性派から実力派へ 『おかえりモネ』で見せる“大人”な存在感
要は、うまい、ということだ。たとえば、ハマケンと同じドラマに出ているほかの俳優に、「いや、困った時にそんなオーバーにわめく人、いないよ」と、思ったことはあるが、そう思った次の瞬間に、今同じ画面にいるハマケンは、こういうふうには芝居しないよなあ、ということに、改めて気がついたりするし。
最初は、いわゆる「個性派」とか「ユニーク」というような言葉で形容される俳優として注目されたが、そんな形容に収まる存在じゃなくなった。与えられた役をどんなふうに演じればいいかの最適解を、絶妙な温度設定を見極めた上で、パッと出せる俳優になった、ということなんだと思う。
と、書いていて、それ、俳優のキャリアの積み方として、『おかえりモネ』に出演している、でんでんや塚本晋也と近い気もしてきた。
でんでん、最初は、小柳トムや象さんのポットと同じように『お笑いスター誕生』に出ていた芸人さんが、森田芳光の映画(『の・ようなもの』)に出てきて、びっくりしたし。
塚本晋也も、今は朝ドラに出ているのを観ても何も違和感を覚えないが、大学生の頃に自分に言っても信じないと思うし。「え?『鉄男』の人が!?」と。
つまり、俳優として、理想的な歩みを続けている、ということなのだと思う、ハマケン。
余談。『おかえりモネ』、モネのお父さん(内野聖陽)が、若い頃ジャズトランペット奏者だったり、モネ(清原果耶)もアルトサックスを吹いていて音楽系の高校を受験したり、と、「管楽器」が物語の要素になっているので、観ていると「出ている役者に本職の人、いますよ」と、言いたくなります。
言ってもしょうがないけど。「あ、そうだ、ハマケン、トロンボーンだ。じゃあ吹くシーン作ろうか」とか、なるわけないし。
※塚本晋也の「塚」は旧字体が正式表記。
■兵庫慎司
1968年生まれ。音楽などのライター。「リアルサウンド」「CINRA NET.」「DI:GA online」「ROCKIN’ON JAPAN」「週刊SPA!」「CREA」「KAMINOGE」などに寄稿中。フラワーカンパニーズとの共著『消えぞこない メンバーチェンジなし! 活動休止なし! ヒット曲なし! のバンドが結成26年で日本武道館ワンマンにたどりつく話』(リットーミュージック)が発売中。
■放送情報
NHK連続テレビ小説『おかえりモネ』
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45、(再放送)11:00 〜11:15
※土曜は1週間を振り返り
出演:清原果耶、内野聖陽、鈴木京香、蒔田彩珠、藤竜也、竹下景子、夏木マリ、坂口健太郎、浜野謙太、でんでん、西島秀俊、永瀬廉、恒松祐里、前田航基、高田彪我、浅野忠信ほか
脚本:安達奈緒子
制作統括:吉永証、須崎岳
プロデューサー:上田明子
演出:一木正恵、梶原登城、桑野智宏、津田温子ほか
写真提供=NHK