『愛の不時着』『梨泰院クラス』などのスタジオ2社が米国進出 韓国エンタメさらなる躍進へ

韓国スタジオ2社がアメリカ進出へ

 VideoとWikipediaを合わせた造語のVikiは、2007年にスタンフォード大学とハーバード大学の学生が立ち上げたアジア系コンテンツハブだったが、2013年に楽天が買収して以来、日本・韓国・中国・台湾などのドラマ・映画・バラエティ番組を豊富に揃えた総合ストリーミングサービスとして会員数を増やし続けている。他のサービスにはない特徴として、各言語のボランティアによって130カ国語以上の字幕がつけられている。広告つきプランは視聴可能作品が限られるが無料、広告なしはスタンダードプランが月額4.99ドル、より多くの作品が見放題になるプレミアムプランが月額9.99ドル。日本からのアクセスも可能だが、放送権・配信権の都合で限られた作品のみが視聴可能となっている。韓国で放送中のドラマもリアルタイムで配信されていて、5月に行われた百想芸術大賞でテレビドラマ作品賞・脚本賞・最優秀演技賞(男優)を受賞した『怪物(原題)』、テレビドラマ演出賞受賞の『悪の花』、最優秀演技賞(女優)受賞の『ペントハウス』、5月末に放映が終了したばかりの『模範タクシー(原題)』など、NetflixとVikiがあれば話題作をほぼコンプリートできる。サービスの充実度よりも、韓国国内で放送(配信)されたドラマがリアルタイムで世界でも観られているという現象には、驚くしかない。

『怪物(原題)』JTBC公式サイトより
『模範タクシー(原題)』SBS公式サイトより
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『怪物(原題)』JTBC公式サイトより
『模範タクシー(原題)』SBS公式サイトより
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 音楽市場では、BTSの事務所HYBEのライブストリーミング会社にBLACKPINKやBIGBANGを擁するYGエンターテインメントとユニバーサル・ミュージックが参加し、デジタルライブストリーミングプラットフォーム「VenewLive」が立ち上がった。また、HYBEはジャスティン・ビーバー、アリアナ・グランデらとマネージメント契約を結ぶSB Projectsの親会社イサカ・ホールディングスの全株式を取得し、世界規模で活動する最大級のエンターテインメント企業へと変貌を遂げた。先頃アマゾンが買収を発表したMGMは、SMエンタテインメント(少女時代、SHINeeなどが所属)と共同で、アメリカでK-POPアーティストを育てるオーデション番組を準備している。通信会社AT&Tからメディア部門を切り離し、ディスカバリーと合弁会社を作るワーナーメディアのHBO Maxは、前述のスタジオドラゴンの親会社CJ ENMと組み、ラテンアメリカ全域でK-POPのオーディションを行う。韓国のウェブ企業カカオ傘下のカカオエンターテインメントは、デジタルコミック(ウェブトゥーン)のポータルサイト、タパスメディアの買収合併を発表した。『梨泰院クラス』や『模範タクシー』などウェブトゥーン発のドラマが人気を博す中で、ハリウッドで高まるIP獲得合戦に乗り込む勢いだ。おそらく、これらの動きはまだ序章に過ぎない。映像、音楽、デジタル出版など、米国および世界のエンタメ市場を積極的に取りに行く意気軒昂な韓国エンタメは、ますます躍進を続けていくことだろう。

参考

https://www.latimes.com/entertainment-arts/business/story/2020-07-22/kpop-rakuten-viki-korean-dramas-streaming-watch-parties-parasite

■平井伊都子
ロサンゼルス在住映画ライター。在ロサンゼルス総領事館にて3年間の任期付外交官を経て、映画業界に復帰。

■配信情報
『愛の不時着』
Netflixにて配信中

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