快作『クルエラ』初登場6位 配信から前倒しの公開もディズニー包囲網は変わらず

快作『クルエラ』配信から前倒しも初登場6位

 東京都や大阪府が映画館に独自の休業要請や休業協力依頼を出していた(今のところ)最後の週末となった先週末の動員ランキングは、『るろうに剣心 最終章 The Final』が土日2日間で動員7万8000人、興収1億1400万円をあげて1位となった。公開から6週目で初の首位となった理由は、日本映画、外国映画ともに有力な新作の公開が止まっていて、休業要請の影響でただでさえ低空飛行で推移してきた上位作品の興収がさらに落ち込んでいるため。シリーズ次作『るろうに剣心 最終章 The Beginning』の公開が控えているせいだろうか、その中では『るろうに剣心 最終章 The Final』の落ち幅が比較的少なかった。

 昨年から長らく「一強作品とその他の作品」な状況が続いていた映画興行だが、低い水準ながら5月半ば以降は『美しき誘惑 現代の「画皮」』、『いのちの停車場』、『るろうに剣心 最終章 The Final』と週ごとにいずれも日本の実写作品が首位に入れ替わってきた。外国映画で最後に首位を飾った作品は2020年9月公開の『TENET テネット』。その前は2020年6月公開の『ドクター・ドリトル』になるので、約1年間、1作品しかトップになってないことになる。ディズニーのように多角的な経営を行っている会社や、ワーナーのようにローカルプロダクション作品に力を入れている会社もあるとはいえ、普通に考えて、海外メジャーの日本法人の経営がここまで持ち堪えているのが不思議なくらいだ。というか、実際にどこも火の車となっている。

 もちろん、その最大の理由は有力なメジャー大作の度重なる公開延期にあるわけだが、もう一つこの状況を生み出してしまったのは、外国映画配給におけるリーディングカンパニーであるディズニーの劇場公開作品が、下位に埋没してしまっていることだ。ディズニーアニメの名作『101匹わんちゃん』に登場する悪役クルエラの誕生秘話を、まるでマーベル作品やDC作品の女性ヴィランのようなトーンで描いたエマ・ストーン主演の実写作品『クルエラ』も初登場6位、初日から4日間で動員6万3948人、興収8666万5080円と奮わなかった。

 『クルエラ』のオープニング成績が3日間ではなく4日間の数字となっているのは、本作が金曜日公開ではなく異例の木曜日公開であったため。今年3月に公開されて、同じく初週6位と不発に終わったディズニーの新作アニメーション映画『ラーヤと龍の王国』が、劇場公開と同日にディズニープラスで配信リリースされることを巡ってのディズニーと全興連(全国興行生活衛生同業組合連合会)との水面下でのやりとりについては本コラムで以前触れたが(参考:ディズニーにとっては因果応報? 『ラーヤと龍の王国』の悲劇)、それを受けて今回ディズニーは『クルエラ』の劇場公開日を配信の前日に前倒しすることにした。これは世界的にも異例の処置で、「さすがにディズニー・ジャパンも今回は本国の言いなりばかりにはならずに頑張った」とも「それでもたった劇場公開が1日早いだけ」とも言えるわけだが、TOHOシネマズ、松竹マルチプレックスシアターズ、ティ・ジョイ、東急レクリエーションなどの大手興行会社傘下の映画館は『ラーヤと龍の王国』の時と同様に公開を見送った。その結果が、今回の成績ということだ。

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