『名も無い日』は大切な人たちの“幸せ”を問う 永瀬正敏と共に見つめる、“喪失”の先

『名も無い日』は大切な人たちの幸せを問う

映画『名も無い日』が描く「人の死と向き合うこと」

 海外在住のカメラマンである主人公・達也(永瀬正敏)は、弟・章人(オダギリジョー)の訃報を受け、故郷・名古屋市熱田区に舞い戻る。3兄弟の中で誰よりも優しく優秀だった章人に何が起きたのか。

自然災害、新型コロナウイルス、死を感じることの多い世の中、人を思いやって生きていきたい
(神奈川県横浜市、男性)

コロナで連絡を抑えていたりしている人へも、連絡を取りたい気持ちになった
(東京都杉並区、男性)

 コロナ禍の苦難もあり、3年の年月を経て公開される本作は、当然コロナ禍を想定して描かれた作品ではないが、どうしても人と疎遠になりがちなコロナ禍の現在をより反映するような、誰にとっても身に沁みる作品となっているのが興味深い。

誰にも起り得る悲しい現実を見て、私の大切な人たちは今本当にしあわせなのか、何かできる事はあるのかと考えさせられた
(埼玉県戸田市、女性)

人を孤独にしてはいけない、どこかで繋がっていなくてはいけないと感じた
(愛知県名古屋市、女性)

あなたのすぐ近くに、家族や友人の中に、“章人”がいるかもしれない
(三重県鈴鹿市、女性)

 「涙が止まらなかった」という感想が多く寄せられるほど、本作は“心に重く響く”なかなかヘビーな作品である。そして、章人の死を通して考えさせられることは多い。章人は決して特別な人ではなく、いつ、誰しもが、章人、そして達也の立場になりえる。スクリーンの中だけの、他人事の出来事として収まらないドラマが繰り広げられる。

「死」を受け入れることとは、残されたものが「生きていく」こと
(東京都北区、女性)

苦しいけど、後悔もいっぱいだけど、乗り越えて生きていかなければ
(千葉県松戸市、女性)

 劇中では、悲しみの先の希望と救いもまた描かれる。映画で追体験した、登場人物たちの身に起こった哀しい出来事を、明日への活力に変えることができた観客が多くいたように。この深い「喪失」を描いた映画は、今までとは違う、私たちの「明日」を予感させる映画でもあった。

■藤原奈緒
1992年生まれ。大分県在住。学生時代の寺山修司研究がきっかけで、休日はテレビドラマに映画、本に溺れ、ライター業に勤しむ。日中は書店員。「映画芸術」などに寄稿。Twitter

■公開情報
『名も無い日』
5月28日(金)より、ミッドランドスクエアシネマ他、愛知県、岐阜県、三重県先行ロードショー
6月11日(金)より、シネマート新宿ほか全国公開
監督:日比遊一
出演:永瀬正敏、オダギリジョー、金子ノブアキ、今井美樹、真木よう子、井上順、藤真利子、大久保佳代子、中野英雄、岡崎紗絵、木内みどり、草村礼子
2020年/日本映画/124分/カラー/ シネマスコープサイズ/5.1ch
配給:イオンエンターテイメント、ジジックス・スタジオ
(c)2021「名も無い日」製作委員会
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