階級差からツンデレまで胸キュンを全部乗せ 『タイタニック』の恋愛映画としての魅力

恋愛映画としての『タイタニック』の魅力

完璧すぎて怖いジャック青年のモテ男ムーブの数々

 ジャックはローズを救った時から、既に彼女の性格を含めその本質を見抜いていたのかもしれない。なぜなら絵描きである彼は人を見る目があるから。だからこそ最強の天然人たらしでもあるジャックがモテ男ムーブを連発し、そんな彼に惹かれつつも終始ツンデレなローズの絡みが本作の胸キュンな見どころだ。

 例えば命を救ってくれたお礼に翌日の晩にディナーを一緒に食べようとなる。その日の日中はデッキで何キロも歩きながらジャックの身の上話をする二人。この時、ローズは自殺しようとしていたことをジャックが軽蔑しているのではないかと不安になっていたが、そんな彼女の気持ちを見透かした上でジャックは「いや、むしろ何がそこまで君を追い詰めてしまったのか」とフォローする。何を隠そう、事故発見時に周囲の人間が駆けつけた際にも、彼はローズが死のうとしていたことを、彼女の面子を考えて黙り通していた。そこで、そんな行動をとった彼女自身ではなく、そうさせた原因に瞬時に目を向けるジャックが百点満点すぎる。

 その後もずっと続く、ジャックのターン。ローズの答えがノーに限りなく近いこと(また、それが追い詰めた原因であること)をわかったうえで彼は彼女に「フィアンセを愛しているのか」と聞く。それに対して「失礼なこと言わないで!」とか言いつつ、答えられないローズ。それを指摘されて余計顔を赤らめながら、「もういい! あんたなんか知らない! さようなら!」とか言っているのに、さよならの握手をずっと離さないし、それもからかわれたら今度はジャックのスケッチブックを奪い「ふーん、絵なんか書いちゃって。ちょっと上手いじゃない」とか言って、結局その場を去るどころか夕食直前まで一緒に過ごしちゃっている。「『タイタニック』ってこんな元祖ツンデレ萌え映画だったのか?」ってくらい、観ているこっちがニヤニヤしてしまう。

 ローズにとってジャックは世界だった。ツバ吐きなどの下品なことも、彼が裸の娼婦をスケッチしていたことも、箱入り娘の彼女にとっては自分の知らない世界を知る男で。甘いマスクの下に女を、世界を見てきた彼は、17歳のローズにとっては刺激そのものだったのだ。しかし、その経験をアドバンテージにせずに終始彼女に対して「君が知りたいのなら教える」と彼女の意思を一番に尊重していく姿勢が本当に紳士的。その後、ジャックに自分のことも“彼女たちと同じように”描いてほしいとローズが頼み、有名なスケッチシーンが登場する。この時のローズは彼がモデルと肉体関係にあったことを想像していて、それも見越したうえで彼に持ちかけたのだ。つまり彼女が彼を誘っている(しかし直接は言えない)という究極のツンデレシーンなわけだが、そこで彼が“プロのアーティスト”であり、モデルとはそういった関係に一切なってなかったことが判明。ここでもジャックの紳士ぶりが炸裂しており、後のとある場面でこの事実が、より二人の行為に重要さをもたらす。

 ジャックの清さは上流階級のエリアに招かれた晩餐時にも発揮される。身分差を思い知らせようとローズの母やフィアンセに意地悪をされるも、彼はそれを遥かに上回る心の大きさで自分の人生観を語る。決して圧倒されることもなく、貧しい身の上を卑下せずに、自信を持って話すその姿は、誰が見ても惚れてしまう。ただのイケメンではなく、若いのに様々な土地を渡り歩いて働いてきたからこそ備わった人間性。美しい装飾品に触れてきたはずなのに体裁だけを気にする富裕層には持ち得ない、その磨き上げられた彼の審美眼。外見にとどまらないその美しさが、ジャックの最大の魅力なのだ。そんな彼を金ローでは『エヴァンゲリオン』シリーズの渚カヲル役で知られる石田彰が吹き替えているのだから、破壊力がすごそう。石田彰は『ザ・ビーチ』でもディカプリオの声を担当している。

「タイタニック」予告編

 そんなイケメンジャックとの胸キュンイベントを中心としたラブストーリーが前半で語られるが、後半は一転してディザスタームービーになる『タイタニック』。その様子は圧巻そのもので、ここにジェームズ・キャメロンの手腕を感じる。正直、前半と比べて急転直下の悲惨さは目をつぶりたくなるほどのものだが、それを全て見届けてこその二人の悲恋だと思う。ぜひ、2週に渡って作品をご覧になってほしい。

■アナイス(ANAIS)
映画ライター。幼少期はQueenを聞きながら化石掘りをして過ごした、恐竜とポップカルチャーをこよなく愛するナードなミックス。レビューやコラム、インタビュー記事を執筆する。90年代に戻りたい。InstagramTwitter

■放送情報
『タイタニック』
日本テレビ系にて放送
第一夜:5月7日(金)21:00〜22:54放送
第二夜:5月14日(金)21:00〜22:54放送
監督・製作・脚本・編集:ジェームズ・キャメロン
出演:レオナルド・ディカプリオ、ケイト・ウィンスレット、ビリー・ゼーン、キャシー・べイツ、ビル・バクストン
(c)1997 Twentieth Century Fox Film Corporation and Paramount Pictures Corporation. All rights reserved.

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「作品評」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる