杉咲花、誰もが認める“お母さん”に 『おちょやん』が描くさまざまな家族のかたち

『おちょやん』千代が誰もが認めるお母さんに

 そして、栗子は自身も抱いた千代と春子の気持ちを見透かしていた。「お父さんはお人好し」特番の放送当日、栗子は千代に花籠を渡し、改めて自分が亡き後のことを頼む。春子は正真正銘、自分とテルヲ(トータス松本)の血を引く子だと強調する栗子は、生きている間に2人の絆を確かなものにしたかったのかもしれない。しかし、千代は血が繋がっていようといまいと、栗子も春子も大切な家族で、一生自分が守っていくのだと主張する。その表情に迷いはない。傷ついた者同士の寄せ集めだった家族は、いつしか本物になっていたのだ。

 実の母を早くに亡くした千代が“大阪のお母さん”と呼ばれるほどの包容力を持てたのは、母親の愛情を栗子にもらい、同時に春子へ与えたからだろう。千代はラジオドラマの共演者と家族になるのは叶わぬ夢と言っていたが、静子に寄り添いともに月を見つめる彼女の顔は誰もが認める“お母さん”だった。

 一方、両親を無事に説得し、静子は出演続行となったが、長澤の脚本作りがスケジュール通りに進まず台本が完成しないまま放送当日を迎えた「お父さんはお人好し」の出演者たち。戦争で傷ついた人たちに元気や勇気を与えるために、集められた“前を向いて生きている”彼らは最大のピンチをいかに乗り越えるのだろうか。

■苫とり子
フリーライター/1995年、岡山県出身。中学・高校と芸能事務所で演劇・歌のレッスンを受けていた。現在はエンタメ全般のコラムやイベントのレポートやインタビュー記事を執筆している。

■放送情報
NHK連続テレビ小説『おちょやん』
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45
※土曜は1週間を振り返り
出演:杉咲花、成田凌、篠原涼子、トータス松本、井川遥、中村鴈治郎、名倉潤、板尾創路、 星田英利、いしのようこ、宮田圭子、西川忠志、東野絢香、若葉竜也、西村和彦、映美くらら、渋谷天外、若村麻由美ほか
語り:桂吉弥
脚本:八津弘幸
制作統括:櫻井壮一、熊野律時
音楽:サキタハヂメ
演出:椰川善郎、盆子原誠ほか
写真提供=NHK
公式サイト:https://www.nhk.or.jp/ochoyan/

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