2021年の現在を描くポップカルチャーの最前線 海外ドラマ“ビンジウォッチのすすめ”

GWに海外ドラマ“ビンジウォッチのすすめ”

 海外のTVシリーズは主に1時間モノと、30分モノの2つのフォーマットに分かれる。筆者は海外ドラマを観るようになって初めて30分ドラマを知ったのだが、その洗練ぶりに驚かされた。ストーリーテリングは機知に富み、簡潔にして豊潤。今では就寝前にコメディドラマを観るのがお気に入りのルーティンだ。

『テッド・ラッソ 破天荒コーチがゆく』

 7月に最新シーズン2が配信される『テッド・ラッソ 破天荒コーチがゆく』は連休明けの活力に繋がる打ってつけの1本だろう。アメフト2部リーグの監督テッド・ラッソ(ジェイソン・サダイキス)が、サッカープレミアリーグの新監督として招聘される。サッカーはずぶの素人というラッソの抜擢に、筋金入りの現地サポーターも猛反発だ。オフサイドも知らないラッソでは、降格寸前のチームもまとまりようがない。

 落ちこぼれチームが困難を乗り越え、優勝を目指していくのはスポーツドラマの定石。しかし『テッド・ラッソ』はちょっと様子が違う。畑違いのラッソを抜擢したオーナー(『ゲーム・オブ・スローンズ』の“Shame”でおなじみ、セプタ・ユネラを演じたハンナ・ワディンガムが好演)の陰謀も、高慢なスタープレーヤーと既にピークを終えたレジェンド選手の確執もドラマを盛り上げる枷として大きな障害にはならない。主人公テッド・ラッソはあらゆる困難に対して前向きに取り組むスーパーポジティブな人物なのだ。常にジョークを忘れず、鬱陶しいくらいの明るさで周囲を巻き込み、人々の心を動かしていく様はほとんど聖人の域である。そんな気持ちのいい好漢を演じた主演ジェイソン・サダイキスの演技は絶賛されており、各アワードの主演男優賞を独占している。

 いわゆる“いい人”しか出てこない『テッド・ラッソ』の清々しさがこの困難な時代に元気を与えてくれるのはもちろんのこと、とことんヒューマニズムな彼のマネージメント論はチームビルディングに悩む上司のあなたにもオススメだ。1話30分で全10話。ゴールデンウィークをはみ出してしまっても、完走するまでやめられないだろう。

■長内那由多(Nayuta Osanai)
映画・海外ドラマライター。東京の小劇場シーンで劇作家、演出家、俳優として活動する“インデペンデント演劇人”。主にアメリカ映画とTVシリーズを中心に見続けている。作品のエモーションを共有できるようなレビューを目指しています。Twitter映画・海外ドラマ レビューブログ

■配信情報
ディズニープラスオリジナルドラマシリーズ『ワンダヴィジョン』
ディズニープラスにて配信中
監督:マット・シャックマン
脚本:ジャック・シェイファー
出演:エリザベス・オルセン、ポール・ベタニー
原題:WandaVision
(c)2021 Marvel

ディズニープラスオリジナルドラマシリーズ『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』
ディズニープラスにて独占配信中
出演:アンソニー・マッキー、セバスチャン・スタン、ダニエル・ブリュール
監督:カリ・スコグランド
脚本:マルコム・スペルマン
原題: The Falcon and Winter Soldier
(c)2021 Marvel

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