『フルーツバスケット』が愛され続ける理由 忠実なアニメ化は原作の感動を呼び起こす
今回のアニメ化はかなり原作に忠実な形でストーリーが描かれている。原作を読んでいたファンは声優に命を吹き込まれたキャラクターたちが紡ぐストーリーで当時の感動を再び味わえるとともに、新鮮な気持ちにもなるのではないだろうか。それは私たちが作品と一緒に年齢を重ねているからだ。例えば8歳の時にフルバを読み始めた私は26歳になった。まだ小学生の頃には理解できなかった登場人物の苦悩や葛藤が、様々な経験を経て今理解できることもある。その一つが、一見本作の“悪役”に思えてしまう草摩家の当主・慊人の気持ちだ。
「子・丑・寅・卯・辰・巳・午・未・申・酉・戌・亥」で構成される十二支は神様が昔、動物たちを元旦に呼び寄せ、到着した順に決めたとされている。この神様に当たる存在が慊人だ。草摩家の当主と十二支の物の怪憑きは大昔の記憶で繋がり、その絆を信じ、同時に縛られている。中でも慊人は十二支との繋がりを絶対視し、物の怪憑きに自分より特別な存在が現れれば、容赦無く排除していく人物だ。だからこそ、幼い頃に見る慊人は恐ろしく、物の怪憑きを苦しめる悪者に見えた。けれど愛情に飢え、絆は目には見えないからこそ大切な人を力づくで自分の元に縛っておきたいという慊人の気持ちは大人になると少し理解できる。それが本作で“呪い”と表現されていることに、少なからずドキッとした人もいるのではないだろうか。
2nd seasonは、透がその“呪い”の正体と男性として振舞っていた慊人が実は女の子だったという衝撃の事実を告げられる場面で最終回を迎えた。最終章となる“The Final”では、草摩の人々を呪いから解放すべく透が動き出す。注目すべきは透の心の変化だろう。透は誰に対しても平等で深い愛情を示すが、ねずみに騙されて十二支の仲間に入れなかった猫憑きの夾に少しずつ特別な感情を抱いていく。そして、次第に生まれるのが夾を「誰からも奪われたくない」という独占欲だ。十二支と絆で結ばれ、ある意味で自分と同じ感情を持っている慊人と透はどう対峙していくのか。自分の中にあるフルバとの思い出を噛み締めながら、また新鮮な気持ちで全編アニメ化での完結を見届けてほしい。
■苫とり子
フリーライター/1995年、岡山県出身。中学・高校と芸能事務所で演劇・歌のレッスンを受けていた。現在はエンタメ全般のコラムやイベントのレポートやインタビュー記事を執筆している。
■放送情報
『フルーツバスケット』
テレビ東京にて、毎週月曜深夜1:30~放送
テレビ愛知にて、毎週月曜深夜1:30~放送
テレビ大阪にて、毎週月曜深夜1:30~放送
AT-Xにて、毎週金曜21:00~放送
※リピート放送:毎週火曜9:00~/毎週木曜15:00~ほか
※放送情報は変更になる場合あり
声の出演:石見舞菜香、島崎信長、内田雄馬、中村悠一、釘宮理恵、潘めぐみ、古川慎、興津和幸、櫻井孝宏、上田麗奈、大地葉、河西健吾、豊崎愛生、梅原裕一郎、坂本真綾、折笠愛、石田彰、森川智之、種崎敦美、佐藤聡美、沢城みゆき、江口拓也、加隈亜衣、
※島崎信長、種﨑敦美の崎は正式には「たつさき」
原作・総監修:高屋奈月『フルーツバスケット』(白泉社・花とゆめCOMICS)
監督:井端義秀
シリーズ構成:岸本卓
キャラクターデザイン:進藤優
美術監督:神山瑶子
色彩設計:菅原美佳
撮影監督:蔡伯崙
編集:肥田文
音響監督:明田川仁
音楽:横山克
音楽制作:トムス・ミュージック
アニメーション制作:トムス・エンタテインメント
製作:フルーツバスケット製作委員会
The Finalオープニングテーマ:「Pleasure」/WARPs UP
The Finalエンディングテーマ:「春うらら」/ GENIC
(c)高屋奈月・白泉社/フルーツバスケット製作委員会
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