『エヴァンゲリオン』碇シンジに『幽☆遊☆白書』蔵馬も 声優・緒方恵美の軌跡とその魅力

 『エヴァンゲリオン』シリーズで、碇シンジ役を演じている緒方恵美。彼女は、『カードキャプターさくら』の月城雪兎、『幽☆遊☆白書』の蔵馬、『ダンガンロンパ』シリーズの苗木誠など、25年以上にわたって数多くの人気キャラクターの声優を務めてきた。並行して音楽活動も行い、4月21日には約4年ぶりのアルバム『劇薬 -Dramatic Medicine-』をリリースする。『シン・エヴァンゲリオン劇場版』も公開中の今、改めて緒方恵美の軌跡と魅力を考える。

さまざまな役柄を演じきるジェンダーレスな声

 2017年に声優デビュー25周年を迎えた緒方恵美。声優デビュー作となった『幽☆遊☆白書』では、オーディションで自己紹介した時の地声が、蔵馬にぴったりだったことで同役に抜擢されたというのは、業界では有名な話だ。女性声優が高校生の男性キャラを演じることも、これが初めてだったという。

 緒方といえば少年役に定評があるが、そのキャリアを振り返ると演じるキャラクターの多様性に驚かされる。

 緒方の名前を世に知らしめた『新世紀エヴァンゲリオン』シリーズの碇シンジ役は、ボソボソと独り言をつぶやくようにしゃべる演技で、14歳の内向的な少年像をリアルに表現して話題を集めた。『ダンガンロンパ』シリーズでは、超高校級の幸運の持ち主・苗木誠を演じ、お人好しだがどんなことにも前向きでまっすぐな役柄がハマった。また、昨年は『地縛少年花子くん』で地縛霊の花子くんを演じ、社交的でちょっとSっ気のある少年キャラクターで新たな魅力を開花させた。

 中性的な魅力を感じさせる役柄としては、『美少女戦士セーラームーン』の天王はるか(セーラーウラヌス)や『カードキャプターさくら』の月城雪兎が挙げられる。天王はるかは、見た目は女性だが第一人称が僕であるなど両方の性を感じさせるキャラクター。緒方は、どこか宝塚の男役のような凜々しさと艶やかさを持った声で女性ファンを魅了。この時の低音が、男性キャラクターよりも低かったのではないかと言われた逸話を持つ。また月城雪兎は、主人公のさくらが憧れる、兄の同級生であると同時にカードが実体化した存在でもあるという複雑な設定。それを緒方は、さくらを見守る温かさとカードとしてのクールさの両面を見事に演じ、ミステリアスな魅力を発揮した。

 一方、艶やかで女性らしい声でファンを魅了した役としては、『魔法騎士レイアース』のエメロード姫が挙げられる。その透き通るような美しく穏やかな声は、ファンのみならず同業者をも驚かせた。エメロード姫のキャラクターソングとして緒方が歌ったイメージソング「闇の夢」は、儚げなハイトーンでまさか碇シンジと同じ声優だとは思えないほど。同様に『円盤皇女ワるきゅーレ』でも、優しく聡明で包み込むような温かさを持った声で、皇女ワルキューレを演じあげている。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「アクター分析」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる