『フルーツバスケット』が愛され続ける理由 忠実なアニメ化は原作の感動を呼び起こす

 世間が『エヴァ』完結で盛り上がりを見せる中、今年もう一つの作品が歴史的な瞬間を迎えようとしている。2019年から放送開始となり、現在最終章が放送中のTVアニメ『フルーツバスケット』だ。

 1998年から2006年まで白泉社『花とゆめ』で連載されていた高屋奈月の少女漫画『フルーツバスケット』(通称フルバ)。コミックスは全23巻で全世界発行累計発行部数3000万部を突破。様々な国で翻訳され、「もっとも売れている少女マンガ」としてギネスにも認定されている。2001年に初めてアニメ化されたが、当時は原作が未完だったため、6巻までの内容を描いて終了に。

 しかし、原作の完結から約13年の時を経て原作者・高屋奈月による総監督の下、最終話までの全編アニメ化が発表された。その吉報を聞いて、けして大袈裟ではなく「生きていて良かった!」と感じた原作ファンも多いのではないだろうか。少なくともフルバに多大なる影響を受けた私自身はそうだった。

 本作の主人公は幼い頃に父親を亡くし、女手一つで育ててくれた母親をも交通事故で失い天涯孤独の身となった女子高生の本田透。彼女はひょんなことから同級生・草摩由希の家に居候し始め、名家の草摩一族と関わりを持つようになる。だが、草摩家の人々は代々十二支の物の怪にとり憑かれており、由希をはじめ生まれつき物の怪が憑いている“13人”は異性に抱きつかれたり、身体が弱ると憑かれた動物に変身してしまうのだ。

 本作は十二支をテーマにしたファンタジーであり、十二支の物の怪憑きや透が通う海原高校の生徒など登場人物が個性的でそれぞれに魅力がある。だが、それ以上に私たちを虜にするのが“言葉の力”だ。草摩家の人々はみな物の怪に憑かれているが故に親や兄弟、友人との関係を作る上で困難を抱えている。例えば、「寅」の物の怪憑きである杞紗(きさ)は他の人と異なる容姿が原因でいじめに遭い失語症に、「卯」の物の怪憑きである紅葉は母親から拒絶され、彼女の中にある自身に関する一切の記憶を隠蔽することに同意した。

 けれど、“物の怪憑きではない”、透の親友・ありさは幼い頃に両親が離婚し、暴走族に入っていたという過去があり、同じく透の親友の咲(さき)も特殊な能力を持っていることから過酷ないじめを受けていたことがある。同じいじめの被害者である杞紗と咲が似たような名前であることに些か運命めいたものを感じるが、大事なのは物の怪憑きの悩みや過去は私たちが持っているそれと意外にも共通しているということだ。だからこそ、彼らが発する言葉に共感し、彼らを覆う闇を取り払う、まっすぐで優しい透の言葉に救われる。何度も思い出したくなる名言が原作にはたくさんあり、故にフルバは現在まで愛され続けているのだろう。

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