2021年はラブストーリーの年に “観るパワースポット”『ラブ・セカンド・サイト』を堪能

『ラブセカ』は“観るパワースポット”

 2021年、日本は“ラブストーリー”にあふれている。映画『花束みたいな恋をした』が大ヒットを記録し、4月クールのドラマはシェアハウスで、海で、漫画編集部で……と様々な場所を舞台にしたラブコメが豊作だ。これは、コロナ禍の反動なのだろうか。

 ステイホームが続く中、誰もが人とつながる尊さを痛感した。そして、当たり前にあると疑わなかったものが、一瞬で失われるあっけなさも。そんな傷ついた心を癒すのが、ラブストーリーなのかもしれない。

 恋の持つパワーは偉大だ。ときめきが人を美しく輝かせ、愛を知った喜びは新しい一歩を踏み出す勇気になる。何もかも思い通りに行かない今こそ、その恋のパワーを求めてしまう。その恋を求める気持ちが、このラブストーリーだらけの日本に通じているのか!?

 誰かと出会いにくくなったのなら、ラブストーリーそのものに恋することだってできる。5月7日から公開される映画『ラブ・セカンド・サイト はじまりは初恋のおわりから』は、そんな2021年を生きる私たちにピッタリなラブストーリーだ。

当たり前が当たり前じゃなくなった世界に

 実は本作、本国フランスで2019年に公開された作品。パンデミック前に作られたものなので、マスクは一切出てこない。どっぷりと、その世界に浸ることができる。なんなら主人公・ラファエル自身が、現実とは別世界に降り立ってしまうのだ。それは、愛する妻・オリヴィアと恋に落ちなかった世界線。

 高校生のときに出会ったラファエルとオリヴィア。2人共、実にシャイな学生だった。ラファエルは小説を、そしてオリヴィアはピアノを、それぞれこっそりと執筆&練習。誰かに見せるなんて恥ずかしいと思っていたけれど、ひょんなことからお互いの才能を認め合う仲に。

 オリヴィアの存在がきっかけとなり、ラファエルはベストセラー作家として成功。オリヴィアは小さなピアノ教室の先生となり、ふたりは結婚する。幸せな日々を過ごしていたはずだが、少しずつ歯車がずれていく。

 我慢の限界を迎えたオリヴィアがその思いをぶつけた夜、2人は背を向けて眠る。そして、朝を迎えたラファエルの隣にはオリヴィアがいなかった。それどころか、2人の恋もなかったことになっていたのだ。

 「どうしてこんなことに」と、絶望するラファエル。「もしかしたら、もう一度オリヴィアと恋に落ちれば元の世界に戻れるのではないか」そう考えたラファエルは、あの手この手でオリヴィアに接近する。しかし、彼女にはすでに結婚を意識した恋人がいて、そしてピアニストとして成功している人生があった……。

 ある日突然別世界に飛ばされてしまう、という一見するとファンタジックな展開も、2021年の私たちならどこか自分のことのように感じられるのではないだろうか。当たり前が当たり前じゃなくなった世界になってしまったという意味では、私たちもラファエルと同じなのかもしれないのだから。ラファエルのオリヴィアを取り戻そうと葛藤する姿を、日常を取り戻したいと願う気持ちが重なって、応援せずにはいられない。

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