『珈琲いかがでしょう』の丁寧かつ誠実な仕事ぶり 2021年の春にこそ味わいたいドラマに
2021年の春こそ飲みたい人情珈琲がある
この作品がオンエアされている今は、新しいシーズンの幕開けでもある春。そして1週間の始まりでもある月曜日だ。何かを変化させるにはピッタリな時期だが、それは一方で「何も変われない自分」への焦りを感じるタイミングでもある。
世の中の流れは目まぐるしく、何が正しいのかがグラグラと揺らぐそんな時代過ごしている。ましてや2020年以降、私たちの暮らしはそれまでとはまた別の形に変化を強いられた。
人とは距離を取っていかなければならない。握手することもはばかられる、新しい生活に人々のストレスは着実に蓄積し、一つひとつのやりとりにも余裕がなくなっているように感じる。そんな2021年の、4月の、月曜の夜なのだ。
そのタイミングに、このドラマは今の自分をありのままに認めてくれるような温かな言葉と、ほんの少しの視点の変化で新しい自分に出会えるヒントをくれる。取り立てて誰かに話すほどでもないけれど、でもフーっと吐き出すことができればきっとラクになる。青山が運営する移動珈琲店は、そんな人の元にやってくるのだ。
多くの人に認められないからといって、ダメなわけではない。「器用に」「適当に」生きることができない垣根の良さは、必ず誰かが見てくれるはず。じっくりと時間をかけて珈琲を淹れる仕事ぶりを通じて、青山は垣根を励ましていく。
無難を求めて大きな冒険ができないからといって、変化が起こせないわけではない。ぬるぬると時間が過ぎていくことに恐怖を覚える早野の嘆きに、じっくり耳を傾ける青山。そして、ガラムマサラをひとふり入れたカフェオレだけでも、人生がガラリと変わることを見せていく。
一見すると垣根も、早野も、特別不幸なわけではない。いわゆる「普通」に生きている人たちだ。だが、その「普通」と見られる生活の中にも、孤独感や焦燥感といった様々な苦味がある。その苦味を生かした珈琲をブレンドしてくれるのが、青山の魅力であり、このドラマの醍醐味。その細かな味わいの違いを1杯目、2杯目……と、オムニバス形式で見ていくスタイルも心地いい。
そして、同じところにとどまることができない青山の素性、不気味な笑みを見せる謎の男・ぺい( 磯村勇斗)との関係性が、どのように紐解かれていくのかも今後の見どころの一つ。ホッとさせてくれたり、眠れなくなるほど興奮させる作用も持つ珈琲。そんな複雑で、繊細で、味わい深い、香り高い珈琲のようなドラマがスタートしたことを嬉しく思う。
■放送情報
『珈琲いかがでしょう』
テレビ東京系にて、毎週月曜23:06~23:55放送
(初回~第3話は5分拡大で23:06~24:00放送)
出演:中村倫也、夏帆、磯村勇斗、光石研ほか
第1話ゲスト:足立梨花、貫地谷しほり
第2話ゲスト:山田杏奈、臼田あさ美
第3話ゲスト:戸次重幸、小手伸也、筧美和子、滝藤賢一、丸山智己
原作:コナリミサト『珈琲いかがでしょう』(マッグガーデン刊)
監督・脚本:荻上直子
監督:森義隆、小路紘史
音楽:HAKASE-SUN
オープニングテーマ:「エル・フエゴ(ザ・炎)」小沢健二(Virgin Music/UNIVERSAL MUSIC)
チーフプロデューサー:阿部真士(テレビ東京)
プロデューサー:合田知弘(テレビ東京)、森田昇(テレビ東京)、山田雅子(アスミック・エース)、平部隆明(ホリプロ)
制作:テレビ東京/アスミック・エース
制作協力:ホリプロ
製作著作:「珈琲いかがでしょう」製作委員会
(c)「珈琲いかがでしょう」製作委員会
公式サイト:https://www.tv-tokyo.co.jp/coffee_ikaga/
公式Twitter:@tx_coffee
公式Instagram:tx_coffee_ikaga