『ハウルの動く城』は何度観ても色褪せない 木村拓哉、倍賞千恵子の声芝居にも注目

『ハウルの動く城』は何度観ても色褪せない

 さて、『ハウルの動く城』と言えば見逃せないのが声の出演者たちだ。ジブリ映画はメインキャラクター役に、声優を専業としているわけではない非・アニメ畑の役者を起用する傾向が強いのだが、本作もその例に漏れず、主人公ハウルを木村拓哉、ヒロインのソフィーを倍賞千恵子が演じている。この映画、根っからの声優ではないはずの2人が、見事に役にハマって上手いのだ。木村は本作以前に少女漫画『花より男子』のCDドラマに3作品ほど出演歴があり、アニメ映画こそ初めてなれど声だけの仕事は『ハウルの動く城』が初めてではないし、倍賞は80年代、90年代通じて長編アニメへの出演歴がある。

 荒地の魔女を演じた美輪明宏は『もののけ姫』で山の犬神モロを(モロの「黙れ小僧!」という台詞はネットミームとしても有名だ)、マルクル役の神木隆之介は『千と千尋の神隠し』の坊、サリマン役の加藤治子は『魔女の宅急便』で孫娘を愛する老婦人、かかしのカブ役の大泉洋は『千と千尋の神隠し』の番台蛙といった具合に、それぞれ過去にジブリ映画の出演歴がある人ばかり。映画を観るまでどんな感じの声か、キャラクターに合うか合わないか予測が付かないという心配がない。むしろ本作では、非・アニメ畑の役者を起用したアニメ映画に有りがちな“声優初挑戦!”という宣伝文句が当てはまらないほどの顔ぶれが揃っていると言っても良い。

 心優しく繊細でありつつ、ドラマの進行とともに悪魔のような外見に変わったり、元の自分を取り戻したりと成長を遂げるハウルのキャラクターに木村の声はベストマッチで、自分は臆病者だと力なくベッドの上で自身の胸の内を語る場面や、ソフィーのミスで自慢の金髪が色変わりしてしまった狼狽の芝居などは見ものだ。余談だが木村は、本作以降も数々のアニメ映画に出演している。

 プロの声優ではない人(主に俳優、女優、アイドルなど)が主役を担当するアニメ映画や洋画吹き替えは、往々にして演技力の不足や声優経験の未熟さから観客の興をそぐことがあり、この手のキャスティングに拒否反応を示す人も多い。正直なところ、かなりがっかりする出来の作品も確かにある。だが『ハウルの動く城』に関しては、配役が上手くいった方の作品ではなかろうか。スタジオジブリの緻密な作画はもちろんだが、声の芝居にも注目しながら見直すと、また新たな楽しみが増えるかもしれない。

■のざわよしのり
ライター/映像パッケージの解説書(ブックレット)執筆やインタビュー記事、洋画ソフトの日本語吹替復刻などに協力。映画全般とアニメを守備範囲に細く低く活動中。

■放送情報
『ハウルの動く城』
日本テレビ系にて、4月2日(金)21:00~23:29放送
監督・脚本:宮崎駿
原作:ダイアナ・ウィン・ジョーンズ・著『魔法使いハウルと火の悪魔』
音楽:久石譲
主題歌:倍賞千恵子「世界の約束」
作画監督:山下明彦、稲村武志、高坂希太郎
声の出演:木村拓哉、倍賞千恵子、美輪明宏、神木隆之介、我修院達也ほか
(c)2004 Studio Ghibli・NDDMT
金曜ロードショー公式サイト:https://kinro.ntv.co.jp/lineup/20210402
金曜ロードショー公式Twitter:https://twitter.com/kinro_ntv

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