土屋太鳳も祝卒業 若手俳優の大学進学が増える中、芸能人と高等教育の関係はどう変わった?
3月15日、土屋太鳳が自身のInstagramで大学を卒業したことを報告した。袴姿で学位証を手に微笑む彼女は、2013年に日本女子体育大学に入学してから実に8年越し、在籍可能期間ぎりぎりで見事に卒業を果たしたのだ。女優として常に第一線で活躍しながら、大学で学ぶことは決して容易ではなかっただろう。留年を重ねながらもきちんと卒業したその姿勢には、本当に頭が下がる思いだ。
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彼女以外にも、近年では多くの若手俳優たちが大学へ進学している。なかでも仕事と両立させながら学業に励み、中退はせず時間がかかっても卒業するという道を選択する芸能人が増えているのではないだろうか。例えば松下奈緒は、高校在籍中の2000年に芸能界デビュー。2003年に東京音楽大学に進学し、女優業が多忙だったために1年留年しつつも、2008年に卒業した。中学生のときに女優デビューした多部未華子は高校卒業後、東京女子大学に進学し、休学や留年などを経て6年で卒業している。桐谷美玲は高校2年生のときに女優デビュー。その後フェリス女学院に進学し2年の休学期間をはさみ、7年かけて卒業した。また、ジャニーズ事務所のタレントたちも近年は多く大学に進学し、卒業している。その道を開いた櫻井翔は、ジャニーズ事務所の所属タレントとして初めての大学進学者だ。彼は嵐としてデビューした翌年の2000年に、慶應義塾大学経済学部に入学。多忙なタレント業をこなしながら授業にもきちんと出席し、4年で卒業したのだから驚きだ。ほかにも山下智久が明治大学、加藤シゲアキが青山学院大学、中島健人が明治学院大学をそれぞれ卒業している。こうしてあらためて見ると、近年仕事と学業を両立してきた若手俳優の多さに驚かされる。
芸能人と高等教育の関係はどう変わった?
一昔前の芸能界では、大学を卒業しているのはごく一部の俳優たちというイメージだった。若いうちから女優として活躍していた吉永小百合は、仕事と学業を両立させ、早稲田大学の第二文学部(夜間)を卒業している。北大路欣也も同窓だ。大学時代に演劇と出会い、その後劇団などでの経験を経て映像作品に出演するようになった俳優たちには、早稲田大学出身者が多いイメージだが、実際には演劇にのめり込み大学を中退したタイプが多い。卒業しているのは、早稲田在籍中に文芸坐研究所に入所した内野聖陽や、やはり在籍中に映画『花より男子』(1995年)でデビューした藤木直人などだ。関西では京都大学の演劇研究会を母体とする「劇団そとばこまち」の辰巳琢郎や生瀬勝久らが有名だろうか。大阪芸術大学の芸術学部舞台芸術学科の学生たちが旗揚げした「劇団☆新感線」は劇団自体が成功し、渡辺いっけいや古田新太、筧利夫らが映像作品でも活躍するようになった。大学演劇サークル経由の劇団出身者は数え始めれば本当にきりがないし、誰を取り上げて誰を取り上げないかで怒られてしまいそうなので、例としてはこのくらいにしておきたい。
しかし、大学で演劇を始めた役者たちが映像作品に出演するようになるまでまでには、かなりの時間を要する。年齢とともに、演じられる役というのはある意味では狭まってくるものだ。若者の役はやはり若者にしか演じられないので、子役や10代のアイドルたちが俳優業でも活躍しはじめる。彼らはこれまでは進学かキャリアの継続かという厳しい2択を迫られてきたが、多くの先達のおかげで、いまは両方を選ぶことができる。
その背景には1990年代から存在感を見せはじめていた読者モデルの存在や、昨今のアイドルブームで若いうちから芸能界入りを希望する子どもが増えたこともあるかもしれない。読者モデルやアイドルのオーディション番組によって、“芸能人になること”のハードルは以前に比べて下がったように見える。読者モデルもアイドルも、俳優に転身することが多い。またSNSが普及し芸能人が身近な存在と感じられるようになったことで、彼らに大学のキャンパスで遭遇したときの学生の反応も、過剰なものではなくなってきているのではないだろうか。