小芝風花の抜群の表現力が光る 『モコミ』最終話に向けて広がる優しい世界

『モコミ』で光る小芝風花の抜群の表現力

 「もしまた萌子美の力が戻ってモノと話せるようになったら、その力を何に使いたい?」――花やモノ、相棒でぬいぐるみのトミーの声さえ全く聞こえなくなった萌子美(小芝風花)に対して、祖父の須田観(橋爪功)が問いかける。土曜ナイトドラマ『モコミ~彼女ちょっとヘンだけど~』(テレビ朝日系)も第9話、ついに最終話まで残すところ1話となった。

 「突然モノと話せなくなるのってどんな感じかな?」と母親の千華子(富田靖子)と父・伸寛(田辺誠一)が話し合うシーンが描かれる。今まで自転車に乗れていたのに急に乗れなくなる感じ? いやもっと世界が変わる感じで謎の病気が流行って突然皆と会えなくなるとか……と、このコロナ禍を示唆するような内容を交えながら、全く“自分ごと”としては実感出来ないような状況をああでもないこうでもないと話し合う。

 前話、観が何度も「“普通”って何だ?」と声を上げていたが、この萌子美の身に起きている摩訶不思議な出来事を、常人にはわかりっこないことを、それでも「どんな感じだろう?」とまず想像してみようと試みるようになったことこそ、本当にこの両親にとっても大きな大きな前進だと言えるだろう。

 伸寛の田舎移住計画を進める中で、実は観が妻と田舎生活をするために住居を探していたことが発覚。観の不倫が許せず、そんな観が妻とのセカンドライフを考えていたなんてにわかに信じられない千華子は、嘘だと決めつけてかかる。何事も“断罪”してしまうのは簡単だ。そして、“許せない”という感情は本当に人を疲弊させてしまう。もちろん、世の中には許されないこともあるだろうが、自分の心に少しでも“想像”してみる余地を残しておくことが出来れば、随分気の持ちようは変わってくるのではないだろうか。伸寛が言う通り「いつまで続けるんだ? 疲れるだけだろ」というのは本当にその通りで、何事も「こうあらねばならい」「こうあるべき」と、そればかりに縛られてしまうのは、あまりに窮屈で、誰かの失敗や間違いを許せないことは何より“自分自身の生きやすさ・心地よさ”を奪ってしまうことになる。萌子美が兄・俊祐(工藤阿須加)の不在時に何とか常連客からのフラワーアレンジメントのオーダーに応えようと、“普段の自分を封印しなきゃ”“オーソドックスなアレンジメントをしなければ”と思い、「自分じゃない誰か」になろうとして苦しかったように。それを境に、これまで見えていた世界が一変してしまったように。

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