『知ってるワイフ』最終回のポイントは? 元春は“キミトミタイセカイ”に辿り着けるか

『知ってるワイフ』最終回のポイントは?

 『知ってるワイフ』(フジテレビ系)が、遂に最終回を迎える。

 理想とかけ離れた結婚生活を嘆く恐妻家の主人公・剣崎元春(大倉忠義)が過去にタイムスリップし、妻を入れ替えてしまうファンタジーラブストーリーという触れ込みから、少し突拍子もないような話を想像していたが、その予想は見事裏切られる。あまりにリアリティのある結婚生活の実情などが生々しく描かれ、強いメッセージ性のある本作に驚かされたり共感してすぐに虜になってしまった人も少なくなかっただろう。

 第1話では、恐妻・澪を演じる広瀬アリスのあまりに鬼気迫る演技や元春のダメ夫ぶり、この掛け合わせによって当然の結果として引き起こされる悲惨な結婚生活に衝撃映像の連続で話題を呼んだ。そこから元春がタイムスリップし、澪との出会いを回避した後、学生時代に自分に想いを寄せてくれていたマドンナ的存在でお嬢様の沙也佳(瀧本美織)とのデート、さらに無事結婚まで漕ぎ着ける。

 澪と結婚していた頃とは比べ物にならないような洗練された暮らしを手に入れるも、勤務先の銀行に独身の澪が異動してきたことでまた運命は変わっていく。

 元春との結婚生活ではいつもカリカリ神経を尖らせ怒鳴り散らし情緒不安定にさえ見えた澪の全く違う様子に、最初は半信半疑ながらも徐々に彼女を恐妻にしてしまったのは他の誰でもない自分のせいだったと気づき始める元春。さらに、最も近くにいたはずの妻だったのにその頃は知らなかった、知ろうともしなかった彼女が抱える家庭の事情が、他人である今になって見えてきて、“もっと自分にできたことがあったのでは”と思い至るようになる。

 ただ、“ご縁”というのは本当に存在するようだ。元春の親友の津山(松下洸平)を傷つけてしまっても、どうしたって惹かれ合ってしまう2人の姿に“運命の相手というのは存在して必ず出会える”“必然の出会いはある”というような前向きなメッセージを受け取ることもできる。

 一方で、「タラレバの仮定の話なんていうのは結局なくて、今向き合っている環境を大事にするしかない」という非常にシンプルかつ普遍的なメッセージを元春の足掻きが伝えてくれる。

 前話では、元春が澪に遂に真実を伝えるシーンが描かれた。最初は戸惑いながらも、澪が導き出した結論が素晴らしい。「結婚していた頃、全く澪を見ていなかった」と自分のことばかり責める元春に伝えるのだ。

「ずっと助けてくれる剣崎主任の存在に依存して結婚しちゃったんだと思います。それにずっと支えてくれたのに、それが当たり前になって感謝の気持ちがなくなったんだと思います。家事と育児が大変だった時、どうしてほしいかちゃんと伝えなかったのかもしれません。どっちかが完全に悪いなんてこと絶対にないと思います」

 未婚ながらここまで想像力を膨らませて“こうだったかもしれない自分”の気持ちに寄り添って想いを伝えられる澪はすごい。ただ、これも結婚の有無にかかわらず、「自力で自分の人生を選択して切り拓いてきた」という自負がある今の澪だからこそ言える言葉なのだろう。

 「私は、剣崎主任と結婚した建石澪じゃないです。母と逞しく生きてきた建石澪です」という心強い一言は正に“いつまでも過去の幻影に囚われているのではなく、今目の前にいる自分を見て向き合ってほしい”という澪からのメッセージであり願いだったのだろう。

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