『モコミ』小芝風花が体現する“世界”との距離の取り方 加藤清史郎との恋の行方にも注目

『モコミ』小芝風花が体現する悲しみ

 しかし、萌子美の身に起きている一連の出来事は一種の例えなのかもしれない。萌子美のような特殊な能力はなくとも、誰しも幼少期には固定観念に縛られず自由に物事の輪郭を描き、自分の思うままに世界を捉えていたのに、大人になるにつれいつの間にか自分の本音を見失ってしまう。千華子のようにどんどん「世間体」や「多数派」の意見、「常識」に惑わされ、雑音が増えれば増えるほど自身の「心の声」に蓋をしてしまい耳を傾けられなくなる。下手に「比較対象」や「基準」が出来てしまうことで、俊祐のようにチャレンジしてみる前に夢を諦めてしまったりするし、先回りして相手のリアクションばかり考えてしまい伸寛(田辺誠一)のように肝心なことほどなかなか口に出せなくなってしまったりもする。本当に自分自身が心底望んでいることなのか、心ときめくことなのかということよりも「こうあるべき」や「こうしなくちゃいけない」に意識が囚われ、“want”よりも“must”ばかりが大きくなってしまう。ふと立ち止まって自分の心の声に耳を傾けてみたところで、もう心が何も発せられなくなっている、あるいは心の声のキャッチの仕方がわからなくなっている。そんな迷える大人は少なくないのではないだろうか。

 ただ、本作が誰にとっても優しいのは、萌子美のような少し不思議な能力を持った人がどんどん外の世界と繋がる様子を描きながらも、一方で「何をやっても可もなく不可もなく」な俊祐のような人間が抱える悩みにも寄り添い、俊祐のコンプレックスでもある“オーソドックスさ”を求める人の存在もきちんと見せてくれるところにあるだろう。

 次週、萌子美はアイデンティティー喪失に繋がりかねないこの大きな変化をどのように受け止め、どう向き合っていくのか。佑矢と萌子美の恋の行方とともに見守りたい。

■佳香(かこ)
元出版社勤務。現在都内OL時々ライター業。三度の飯より映画・ドラマが好きで劇場鑑賞映画本数は年間約100本。Twitter

■放送情報
『モコミ~彼女ちょっとヘンだけど~』
テレビ朝日系にて、毎週土曜23:00~23:30放送
出演:小芝風花、加藤清史郎、工藤阿須加、田辺誠一、富田靖子、橋爪功、水沢エレナ、内藤理沙ほか
脚本:橋部敦子
演出:竹園元(テレビ朝日)、常廣丈太(テレビ朝日)、鎌田敏明
音楽プロデュース:S.E.N.S. Company
音楽:森英治
エグゼクティブプロデューサー:内山聖子(テレビ朝日)
プロデューサー:竹園元、中込卓也(テレビ朝日)、布施等(MMJ)
制作著作:テレビ朝日
制作協力:メディアミックス・ジャパン(MMJ)
企画協力:オスカープロモーション
(c)テレビ朝日

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