『モコミ』小芝風花が体現する“世界”との距離の取り方 加藤清史郎との恋の行方にも注目

『モコミ』小芝風花が体現する悲しみ

 「これにて良いお兄ちゃんの役を降板させていただきます」――俊祐(工藤阿須加)の唐突な宣言から始まった土曜ナイトドラマ『モコミ~彼女ちょっとヘンだけど~』(テレビ朝日系)第7話。

 前話、清水家に岸田佑矢(加藤清史郎)を招いての食事会であらわになった俊祐の意外すぎる本音。これまで反抗期もなかった俊祐の突然の告白と家出に、特に母親の千華子(富田靖子)は取り乱すも、萌子美(小芝風花)から「自分がどうしたら良いかわからない時に、いろいろ言われたらもっと混乱する。安心して戻れるように待っててほしかった」と自身が学校に行けなくなった時の気持ちや経験をもとに諭され、信じて待つことを決める。

 大変だったのは花屋での仕事だ。俊祐が作るオーソドックスなフラワーアレンジメントが好きだという常連客からのアレンジメント依頼に応えようと萌子美は奮闘する。花の声を無視して兄のアレンジメントに似せようとすればするほど、これまで色鮮やかだった花たちが一気に色彩をなくし、一気に元気をなくしていく。それはきっと萌子美にとって想像を絶する痛みを伴う試みだったのだろう。

 これまで幼い頃からどんなに周囲に変人扱いされても嘘つきだといじめられても、頑なに守ってきた自分だけの世界、大切なものを彼女は手放そうとしたのだ。兄のいない花屋を自分が守るために。兄に安心して戻ってこられる場所を残しておくために。彼女は俊祐が使っていた花ばさみを手にとり、そのハサミの声を聞いて作業を進めていく。見事俊祐に似せたアレンジメントが出来上がっていくが、一方萌子美の表情からはどんどんいつもの生き生きとした輝きが消えていく。彼女が神経をすり減らし消耗している様子を、萌子美演じる小芝風花が一切言葉を発さず、表情だけで見事表現していた。それは、花屋に兄の姿が戻り喜んだのも束の間、萌子美に急に異変が訪れた時もだ。これまで聞こえていた花やモノ、相棒のぬいぐるみのトミーの声さえ聞こえなくなってしまった。その大きな大きな変化感を、彼女の一瞬の表情やこれまでとは違うモノや花との絶妙な距離の取り方、もっと言えば彼女の「世界」との距離の取り方で表してくれていた。

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