福士蒼汰、“好青年”や“狂気”のイメージを発展 『神様のカルテ』で見せた著しい変化
その後、『図書館戦争』(2013年、2015年)の岡田准一と再共演を果たした『ザ・ファブル』(2019年)、さらに藤原竜也の前に立ちふさがる強敵として登場した『カイジ ファイナルゲーム』(2020年)と、映画2作連続で異なった“狂気”を見せ、ドラマでは『明治開化 新十郎探偵帖』(NHK-BSプレミアム)でサスペンス時代劇の主人公、『DIVER-特殊潜入班-』(カンテレ・フジテレビ系)では「悪を持って悪を制す」主人公を演じた。
『神様のカルテ』では、そうした姿勢や経験からのアウトプットをはっきりと感じさせている。実写に落とし込むには難あるクセの強い主人公を、声色だけでなく、立ち姿や瞳での表現など、そのクセを残しながら、絶妙なラインで、こちらが寄り添える人物に。福士は、かけられた期待に見事応えた。
第1話で学士(岡山天音)に放った「私も男爵もハルも騙されてなどおらんのに、何を恥じる必要がある!」の一連のやりとりと、学士の御嶽荘からの旅立ち。そして末期がん患者・安曇さん(風吹ジュン)からの言葉。第2話での大学の同期・進藤辰也(中村蒼)への愛ある叱咤。第3話では信頼し合える仲間である東西主任看護師(大島優子)と、その大切な人である榊原(竹財輝之助)とのエピソードや、一止に大きな影響を与える小幡医師(水野美紀)の存在、そして大狸先生(北大路欣也)と古狐先生(イッセー尾形)との3人での送別会などなど、多くの対話が印象に残った。モノローグが非常に多い作品であり、声での芝居や一人芝居も重要だが、何より共演者たちとのアンサンブルが心に響いた。また本作には、一止が「ハッ」と何かに気づく表情での芝居がとても多いのだが、福士は、そうした対話から、そのいずれにも、違ったニュアンスを生んでいる。
コロナ禍における医療ものの撮影という困難な現状から、24時間フル稼働の基盤病院ならでは喧噪は感じない。しかし、返ってひとつひとつの心のやりとりへとフォーカスできたと思う。第4話で一止は大学病院へ。新たなゲストとして市原隼人、北村有起哉、貫地谷しほりらが登場。今度はどんな音色を伝えてくれるだろうか。一止と、周囲の人々の物語を見届けるとともに、俳優・福士蒼汰の大いなる変化を感じる機会を逃したくない。
■望月ふみ
70年代生まれのライター。ケーブルテレビガイド誌の編集を経てフリーランスに。映画系を軸にエンタメネタを執筆している。親類縁者で唯一の映画好きとして育った突然変異。
■放送情報
ドラマスペシャル『神様のカルテ』
テレビ東京系にて、3月8日(月)20:00~21:54放送
出演:福士蒼汰、清野菜名、上杉柊平、新山千春、伊原六花、上原実矩、村杉蝉之介、大倉孝二、渡辺いっけい、大島優子、イッセー尾形、北大路欣也
第1話ゲスト:風吹ジュン、岡山天音、宮澤エマ、平山祐介、小倉一郎
原作:夏川草介『神様のカルテ』『神様のカルテ2』『神様のカルテ3』『新章 神様のカルテ』(小学館刊)
脚本:森下直
監督:村上正典(共同テレビジョン)、谷口正晃、橋本一
音楽:平井真美子
チーフプロデューサー:中川順平(テレビ東京)
プロデューサー:田辺勇人(テレビ東京)、黒沢淳(テレパック)、石井満梨奈(テレパック)
制作協力:テレパック
製作:テレビ東京、BSテレ東
(c)テレビ東京
公式サイト:https://www.tv-tokyo.co.jp/kamisama_karte/
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