池松壮亮が考える“物語”が持つ役割 「人間にとって絶対に必要なもの」

池松壮亮が考える“物語”が持つ役割

綾瀬はるかが体現した震災からの10年

ーー思いを寄せ合いはじめる蒼と瑛希の間には、いなくなってしまった蒼の夫・高臣(高良健吾)の存在があります。瑛希は高臣の思い出を通して蒼を知って、惹かれていく。見えない高臣の存在があり、2人の距離感が絶妙でした。

池松:蒼と瑛希、“2人”のラブストーリーではないというのはこのドラマのオリジナリティ溢れるポイントだと思っています。蒼に触れていくということは、彼女の一部である高臣にも触れていくということ。実際自分がその立場になったとすれば、恐らく夢でも幽霊でも良いから会いたいと願い続けるはずです。その痛みを一緒に引き受けることができるのか、その気持ちの在り方はたくさん考えました。僕が演じた瑛希は外からやってくる人間。一方、綾瀬さんが演じた蒼は石巻の10年を背負った人間。あの10年を背負い、それでも“笑う”という蒼は、綾瀬さんでなければ演じられなかったと強く感じました。

ーー本作の中では、「絵本」「映画」といった「物語」が重要な役割を果たします。大きな質問になってしまいますが、池松さんにとって、「物語」の持つ役割はどんなものだと思いますか?

池松:難しいですね。人間にとって絶対に必要なものではないでしょうか。宗教も国家も政治も家族もすべて人間だけが作り出した“物語”ですよね。人は物語を作り出すことが出来たからこそこれまで繁栄してきた。それがフェイクニュースだったとしても。しかし今日議論されている芸術は不要不急問題や、事実と科学を人類が蔑ろにし自分たちに優位な物語を紡いできたこと、そのことは改め、今一度考え直すべきことだと思っています。自分たちに何が必要なのか、あるいは何を信じるべきなのか、これからの未来、社会や人類の重要な問いを、あらゆる方法を使って紡ぐことが物語の役割なのかなと思っています。大きな回答になってしまいますが、何を信じて生きてゆくのか、それが物語なのではないかと思います。

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■放送情報
『あなたのそばで明日が笑う』
NHK総合・BS4Kにて、3月6日(土)19:30〜放送(73分)
作:三浦直之
出演:綾瀬はるか、池松壮亮、土村芳、二宮慶多、阿川佐和子、高良健吾ほか
制作統括:磯智明
プロデューサー:北野拓
演出:田中正
音楽:菅野よう子
写真提供=NHK

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