成田凌、杉咲花を輝かせる“受け”の芝居 『おちょやん』一平のにじみ出る優しさ

成田凌、杉咲花を輝かせる“受け”の芝居

 一平は鶴亀家庭劇を旗揚げしたときからずっと母親の無償の愛を芝居にしたがっていた。彼にとって幼い頃から一緒に暮らしていない母は無償の愛情を注ぐ存在ではなかった。ヨシヲに対する千代の愛情は、自分を犠牲にしたとしても何があっても救いたいという母性の象徴。ヨシヲを引き止めることができず「うちはまたひとりになってしもた」という千代を「ひとりやあれへん。俺がおる」と一平は抱きしめた。

 一平がいう「新しい喜劇を生み出す」という夢は、千代がいなければ実現できない。どこまでも前向きでたくましく進んでいこうとする千代の他人には分からない苦しみやつらさを本当に理解できているのは一平で、成長するほどに度量は大きく、千代への愛も深くなるようだ。杉咲花演じる千代がこんなにも魅力的に可憐に輝くのは、相手を受け止める成田凌お芝居があってこそ。表面的にはやる気がないように見えながらも、芯の部分で熱い気持ちをたぎらせている一平。成田が放つ浮遊感と、アンニュイな表情が一平に絶妙にマッチしている。

 頼りなく見えながらも千代を抱きしめたときに溢れんばかりの力強さがあったように、今後は一平のさらなる成長、およびこれまでにない“熱い”成田の芝居に期待がかかる。大人になった千代と一平は、二人三脚でどんな道を歩んでいくのか。次週は一平の「天海天海」二代目襲名と実の母親との再会がテーマになっている。千代との関係にもさらなる変化が起きそうだ。

■池沢奈々見
恋愛ライター。コラムニスト。

■放送情報
NHK連続テレビ小説『おちょやん』
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45
※土曜は1週間を振り返り
出演:杉咲花、成田凌、篠原涼子、トータス松本、井川遥、中村鴈治郎、名倉潤、板尾創路、 星田英利、いしのようこ、宮田圭子、西川忠志、東野絢香、若葉竜也、西村和彦、映美くらら、渋谷天外、若村麻由美ほか
語り:桂吉弥
脚本:八津弘幸
制作統括:櫻井壮一、熊野律時
音楽:サキタハヂメ
演出:椰川善郎、盆子原誠ほか
写真提供=NHK
公式サイト:https://www.nhk.or.jp/ochoyan/

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