『おちょやん』キスから始まる再会劇 10数年ぶりに会った弟・ヨシヲに怪しい影?

『おちょやん』キスから始まる再会劇 10数年ぶりに会った弟・ヨシヲに怪しい影?

 「ヨシヲ? あんた今までどこで何してたんや」。『おちょやん』(NHK総合)第57回で、再会は突然に、しかも意外な形で訪れた。9歳で道頓堀に奉公に出た千代(杉咲花)。父テルヲ(トータス松本)を除けば唯一の肉親である弟ヨシヲ(倉悠貴、幼少期:荒田陽向)のことは片時も胸から離れなかった。女優を続けていけば弟に会えるかもしれないと考える千代にとって、ヨシヲの存在は心の支えであり、再会は夢でもあった。

 ヨシヲは劇場にいたことになる。新作劇「若旦那のハイキング」で一平(成田凌)に唇を奪われた千代。客席は騒然とし、警官が止めに入って舞台は中止となる。男女の色恋に関する表現は検閲の対象となっており、鶴亀家庭劇は警察に呼び出される。かろうじて公演中止は免れたが、「ほんまのことを芝居にしたい。新しい喜劇を作りたいんや」という言葉からは一平の気概が伝わってきた。

 生き別れた肉親に会ったら、人はどんな反応をするのだろうか? 一平に殴りかかった男の顔を見上げ、千代は幼い日の面影を重ね合わせる。徐々に実感が湧き、空白の時間を埋めるように言葉が口をついて出た。「こない大きなって。会いたかったで」。この10数年で千代もヨシヲもいろいろなことがあった。互いの身の上話に耳を傾ける2人。そこには言葉にできない思いもあった。

 「よかったなあ、姉やん。あないええ人たちに育ててもろて」とヨシヲ。親に捨てられた千代には、いつの間にたくさんの家族ができていた。シズ(篠原涼子)たち岡安の一家はヨシヲに温かい言葉をかける。かめ(楠見薫)をはじめ女中陣は一平の行状に怒り、ヨシヲの話に目を潤ませる。一平が「俺の家族」という鶴亀家庭劇は気心の知れた仲間たちだ。しかし、肉親として登場したヨシヲは、何やらわけありな風情を漂わせていた。

 一平はヨシヲのことが引っかかっていた。同じ境遇の千代に家族がいたことや、キスしたことを軽く流されたこと以上に、ヨシヲの襟元に見えた影が気になる。ヨシヲいわく「神戸にある土地とか建物扱うてる会社に勤めて、いろいろ勉強さしてもろてます」。テルヲの借金がかさんで家を飛び出したヨシヲは、「泥水すするような毎日」で「野良犬以下やったわ」と述懐。その後拾われたのが現在の勤め先というわけだ。折も折、道頓堀でボヤ騒ぎがあり、鶴亀の事務所にも脅迫電話が……。

 「家族」という言葉の多義的な意味合いを感じさせる回だった。千代にとって、岡安も鶴亀家庭劇も広い意味で家族だが、その意味はそれぞれ異なる。ヨシヲにとって、家族はどんな存在だろうか? 実母サエ(三戸なつめ)の写真を見るヨシヲの眼差しが印象に残った。

■石河コウヘイ
エンタメライター、「じっちゃんの名にかけて」。東京辺境で音楽やドラマについての文章を書いています。ブログTwitter

■放送情報
NHK連続テレビ小説『おちょやん』
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45
※土曜は1週間を振り返り
出演:杉咲花、成田凌、篠原涼子、トータス松本、井川遥ほか
語り:桂吉弥
脚本:八津弘幸
制作統括:櫻井壮一、熊野律時
音楽:サキタハヂメ
演出:椰川善郎、盆子原誠ほか
写真提供=NHK
公式サイト:https://www.nhk.or.jp/ochoyan/

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