松坂桃李×仲野太賀のヲタク演技も注目 『あの頃。』で感じる“他愛ない会話”の大切さ
松浦亜弥が一世を風靡していた時代、つまり2000年代初頭が舞台なのですが、随所に時代背景・設定を緻密にする工夫も見られ、ノスタルジックな気持ちに包まれました。SNSもそこまで発展しておらず、ネットオークションも普及していなかったのではないでしょうか? 握手会もAKBグループとかとは違って抽選なんですね。
「“好きなもの”をなかなか手に入れることができない」ということが、本作では決してマイナスには映らないように感じます。今はなんでもすぐに情報やモノを手に入れやすい時代になりましたが、そうでないからこそ、一つ一つの喜びもひとしおです。
モノに限らず、人にしても同じことのようです。本作の劔たちアイドルオタクグループはみんなそれぞれ違った個性があり、そのやりとりはまるでラジオのように聴き心地の良いものになっています。ずっと観ていたいぐらいです。なかなか世知辛いことが続く現代ですが、こんな他愛ないやりとりこそ今一番求められているものなのかもしれません。リアルサウンド映画部では、年末に今泉監督へのインタビューを実施(参考:今泉力哉監督と考える、日本映画界の現状 作家にとって理想の環境はいかにして作られる?)。たっぷりとお時間をいただいたのでこちらもぜひ鑑賞前後にお読みください。
※山崎夢羽の「崎」は「たつさき」が正式表記。
■公開情報
『あの頃。』
TOHOシネマズ 日比谷ほかにて公開中
出演:松坂桃李、仲野太賀、山中崇、若葉竜也、芹澤興人、コカドケンタロウ、大下ヒロト、木口健太、中田青渚、片山友希、山崎夢羽(BEYOOOOONDS)、西田尚美
監督:今泉力哉
脚本:冨永昌敬
音楽:長谷川白紙
原作:劔樹人『あの頃。 男子かしまし物語』(イースト・プレス刊)
製作幹事:日活、ファントム・フィルム
配給:ファントム・フィルム
2021年/カラー/ヨーロピアンビスタ/5.1ch/117分
(c)2020『あの頃。』製作委員会
公式サイト:https://phantom-film.com/anokoro/
公式Twitter:@eiga_anokoro