『俺の家の話』子供たちに罵倒された“昭和の父” 古い価値観をアップデートできるのか?

『俺の家の話』子供たちに罵倒された“昭和の父” 古い価値観をアップデートできるのか?

 『俺の家の話』(TBS系)の第4話で、観山家の養子・寿限無(桐谷健太)は、父・寿三郎(西田敏行)の隠し子であることが判明。やはり主人公の寿一(長瀬智也)と寿限無は血のつながった兄弟だったのだ。ここで、この物語が小説『カラマーゾフの兄弟』をベースにしていることは確定的となった。寿限無はカラマーゾフ家の使用人夫婦に育てられたスメルジャコフのポジション。日本の翻案ドラマ『カラマーゾフの兄弟』(2013年/フジテレビ系)で松下洸平が演じた末松に当たると言えば、おわかりいただけるだろうか。

 ラストシーン、「道成寺」の鐘の後ろから出てきた寿限無の形相はガクブルものの迫力だった。自分が生まれてからの40年間、真実を明かさなかった実父・寿三郎に向かって、「うるせえ、クソジジイ」と静かな怒りをにじませた声も凄みがあり、これまで師匠として寿三郎に滅私奉公してきた寿限無の遅すぎる反抗期が始まったようだ。2月19日放送の第5話予告では「卑屈は俺のキャラだ。今さら変えられるか!」と叫んでいるので、今後がなかなかに心配だ。

 寿一は、能楽師兼プロレスラーとして忙しい日々を送り、プロレスと能を棲み分けできないような状況に。週末に扮する「スーパー世阿弥マシン」は、元「ブリザード寿」であることを隠しながら「世阿弥」の化身としてリングで戦い、ファンサービスの場でとっさに世阿弥の「ぜあっ」を唯一の言語にした結果、ウルトラマンのようにもなってしまっている。まさに“キャラが渋滞中”だ。加えて、寿一には父親という顔もある。息子の秀生(羽村仁成/ジャニーズJr.)は能のセンスがあり、早くも初舞台を踏むことに。寿一は息子が自分と同じ道を歩んでくれることがうれしいのだが、元妻は妊娠中で再婚間近。戸籍では自分が秀生の父親でなくなる可能性も出てきて、ここでも立場がなくなる。

 寿三郎のような昭和の父親はもっとシンプルだった。多くの家庭が封建的な家父長制度を引きずり、経済的にも男性が主な稼ぎ手だった中、“家で一番えらい人”というひとつのキャラで通せた。妻や子供たちは“お父さん”が仕事ばかりして家庭を顧みなくても、育児は妻任せで寿三郎のように「(子供の)おむつを替えたことがない」としても、文句を言えない。さらには、寿三郎のように他の女性に手を出し子を産ませたという裏切りがあっても、妻には経済力がないので離婚もできなかったのだろう。「控えめすぎて」早くに死んでしまったという寿一の母親は、この昭和という時代と、伝統芸能の家の犠牲者のようにも思える。

 しかし、平成を通り越し、令和の今を舞台にしているこのドラマ。その世代間ギャップは激しい。寿三郎は寿限無が隠し子であったこと、その養育を番頭に押し付けたことをようやく告白し、「罪の意識にさいなまされて」いながらも、どこかで許されると思っていたようだ。「夜の人間国宝が」などと冗談を口にする。幼い頃は文句を言えなかった寿一ら3人の子は、衝撃の事実を知り「クソジジイ!」と初めて父親を全否定。寿一は「家のためだったら何やってもいいと思ってんのかよ」と責め、さすがに昭和の理屈は通らないと悟った寿三郎は「すまなかった」と謝罪する。

 70代や80代になった男性が意識改革し、“女こども”を軽んじていた自分は間違っていたと認めることができるか。65歳以上の高齢者が人口の30%近くを占める現在、これも介護とともに大きな問題だ。現実でも、寿三郎のように組織のトップに立つ高齢男性がその立場に甘んじて間違った価値観のまま生きていることを露呈し、下の世代を落胆させ、反発を招いている最中。まさにこの第4話は現実にリンクするエピソードとなった。

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