中島健人×中条あやみ『ニセコイ』の映画的な魅力 その構造は『かぐや様』につながる!?

『ニセコイ』が中島健人にもたらした変化 

 もちろん、コミカルさやスピード感といった力技のように思える部分も、映画的な魅力を携える上で大きな役割を担っている。それは『かぐや様〜』の時にも指摘した通り、河合監督の職人芸が原作のトーンがうまく符合したからに他ならないのだろう。現代のプログラムピクチャーと呼ぶべき“キラキラ映画”には、複数本手掛ける監督であればあるほどその特色がはっきりと現れており、正統派を貫きながら青春の苦さを露呈させる三木孝浩、同じく正統派でありながらロマンティックさを追求する新城毅彦、純然と原作の流れを組む廣木隆一、得意分野のポップなコメディ性をリズムとして潜ませる川村泰祐に、あえてそれを全面に押し出す英勉などなど。

 なかでも河合作品ではキャラを立てることによってポップさを際立てることが率先して行われている。もちろん漫画を原作とした作品は、あらかじめ視覚的なイメージが定着しているためそれに寄せるという作業はどうしても付きものではあるが、鈴木亮平が30kg増量して屈強な主人公を熱演した『俺物語!!』しかり、漫画から飛び出してきたような理想的なオーラを放つ片寄涼太を掘り出した『兄に愛されすぎて困ってます』しかりと、それが肝になる部分が大きいのが河合作品の特徴ではないか。

 本作ではドラマ版の『黒崎くんの言いなりになんてならない』につづいて組む中島健人を、“黒王子”キャラから一転してヘタレなもやし男・楽に様変わりさせる。原作に雰囲気を寄せたところでもかなり凡庸になりかねないキャラクターに面白みを与えるため、インパクトのある3人のヒロインをとくに強調させる。それぞれの初登場シーンであったり、楽の視点が向けられた際の三者三様の演出であったり。こうした全体のバランスを見極めた作業が、後に圧倒的な再現度が好評となった『かぐや様〜』につながるのだろう。

 ちなみに、楽の視点で物語は進むわけだが、それぞれのヒロインの視点から映画を観進めてみるのも一興だ。とりわけ池間演じる小野寺小咲の視点から、楽という主人公の変化を追ってみると、そこになんとも切ない少女漫画的な奥行きが生まれる。それもまた『ニセコイ』の稀有なユニークさではないだろうか。

■久保田和馬
1989年生まれ。映画ライター/評論・研究。好きな映画監督はアラン・レネ、ロベール・ブレッソンなど。Twitter

■放送情報
『ニセコイ』
TBS系にて、2月8日(月)深夜26:05~28:25(※一部地域を除く)
出演:中島健人(Sexy Zone)、中条あやみ、池間夏海、島崎遥香、岸優太(King & Prince)、青野楓、河村花、GENKING、松本まりか、丸山智己、加藤諒、団時朗、宅麻伸(友情出演)、DAIGO
原作:古味直志『ニセコイ』(集英社『ジャンプコミックス』刊)
監督:河合勇人
脚本:小山正太、杉原憲明
音楽:高見優
主題歌:「かわE」ヤバイTシャツ屋さん(ユニバーサル シグマ)
(c)2018 映画『ニセコイ』製作委員会 (c)古味直志/集英社
公式サイト:https://www.tbs.co.jp/program/nisekoi_20210208/

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