『俺の家の話』はただの愛情物語ではない 宮藤官九郎が描く“お金”と“介護”の現実

“お金”と“介護”の現実描く『俺の家の話』

 今までのドラマであれば、「後妻業の女」であるかもしれないという謎を、もう少しひっぱる可能性もあっただろう。しかし、第2話であっさりと解決してしまうには、理由があるようにも思える。

 第1話では、親子の確執は、あっさりと解決し、父と子の愛情もすべてではないが取り戻され、本音も見え隠れしながら、お互いにコミュニケーションも取れるようになったと見えた。第2話では、さくらの「後妻業の女」疑惑も解決した。こうした問題が早く解決する展開は、介護は、「家族」の「愛」だけでやれるものではなく、さくらのようなその道のプロフェッショナルである他人の力や、お金も重要なものであり、単なる美談では描けないということだろう。

 第3話の予告を観るかぎり、介護するものたち、主に寿一の「日常」、つまり仕事や生きがい、そして残される家族の「関係性」も維持していくべきものに入るのではないかとも思える。

 逆に、単なる「家族」の「愛」を描く物語であれば、第2話で解決した「後妻業」の話も、第1話で見せた父と子との会話も、最終回近くまでひっぱれたはずだ。父親と息子の介護の話を描くには、単純な美談にはできない問題が山積みで、それを各回で、今後もたくさん描いていかないといけない。だからこその、このスピード感なのではないだろうか。

■西森路代
ライター。1972年生まれ。大学卒業後、地方テレビ局のOLを経て上京。派遣、編集プロダクション、ラジオディレクターを経てフリーランスライターに。アジアのエンターテイメントと女子、人気について主に執筆。共著に「女子会2.0」がある。また、TBS RADIO 文化系トークラジオ Lifeにも出演している。

■放送情報
金曜ドラマ『俺の家の話』
TBS系にて、毎週金曜22:00〜22:54放送
出演:長瀬智也、戸田恵梨香、永山絢斗、江口のりこ、井之脇海、道枝駿佑(なにわ男子/関西ジャニーズJr.)、羽村仁成(ジャニーズJr.)、荒川良々、三宅弘城、平岩紙、秋山竜次、桐谷健太、西田敏行
脚本:宮藤官九郎
演出:金子文紀、山室大輔、福田亮介
チーフプロデューサー:磯山晶
プロデューサー:勝野逸未、佐藤敦司
編成:松本友香、高市廉
製作:TBSスパークル、TBS
(c)TBS

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