岩田剛典の演技の経験が集約 『名も無き世界のエンドロール』で表現された“人間の変化”

岩田剛典の演技の経験が集約 『名も無き世界のエンドロール』で表現された“人間の変化”

 キダの物語は映画だけでは終わらない。劇場公開と合わせて配信されるdTVオリジナルドラマ『Re:名も無き世界のエンドロール 〜Half a year later〜』では、映画のラストから、半年後が描かれる。ここからは、ネタバレを避けたい方は、映画を観た後に読んでもらいたい。

 キダは依頼を受けて向かった場所で、ミチルという女性(松井愛莉)に出会う。ミチルから「1日あれば、世界は変わるんだからさ」と告げられるのだが、その言葉は以前、ヨッチが言っていた言葉だった。

 半年後のキダは、さらに深い孤独を抱えているように見えた。所属する組織のトップの川畑(柄本明)から依頼をもらうときには、髪はぼさぼさ、無精ひげ姿で、彼がほとんど誰とも関わらずに過ごしていたことがうかがえる。

 ミチルに対してはじめは、ぶっきらぼうだったキダ。しかし、彼女の遠慮のない、率直さに触れて、学生時代のような顔に戻るようになる。影はあるけれど、その中には優しさや温かさがあり、ドッキリをしかけられて、ニコニコしているような人柄に、もう一度戻る瞬間を見せるのだ。岩田は、“人間が丸ごと変わってしまうよう”な大きな変化を何段階にも渡って自然に、映画からドラマを通して表現していた。

 映画版に続いて登場する組織のトップ役を演じる柄本明は、決してあからさまな威圧感を出しているわけではないのに、ただならぬ空気を漂わせる。そして、ミチルが強制的に働かされている店のオーナーであり、恐怖ですべてを支配しようとしているが、力を誇示しようとすればするほど、どこか弱さを感じさせるケイを演じる金子ノブアキなど、岩田が彼らと向き合うのはかなりの挑戦であったように思う。そして、そんな“凄腕”の共演者から演技を吸収し、自らの芝居を発展させていたのではないだろうか。

 映画、ドラマを最後まで観ることで、キダがどんな生き方を選んでいくのか、彼の奥底に秘められた覚悟がうかがえる。そして、今まで岩田が数々の作品で演じてきた経験がこの一作に集約されているように思えた。ひとつの作品で、さまざまな表情を演じ切り、キダを生きている岩田の姿を見て、ドラマからその先のキダの物語も観てみたいと思った。

■西森路代
ライター。1972年生まれ。大学卒業後、地方テレビ局のOLを経て上京。派遣、編集プロダクション、ラジオディレクターを経てフリーランスライターに。アジアのエンターテイメントと女子、人気について主に執筆。共著に「女子会2.0」がある。また、TBS RADIO 文化系トークラジオ Lifeにも出演している。

■公開情報
『名も無き世界のエンドロール』
1月29日(金)全国ロードショー
出演:岩田剛典、新田真剣佑、山田杏奈、中村アン、石丸謙二郎、大友康平、柄本明
原作:行成薫『名も無き世界のエンドロール』(集英社文庫)
監督:佐藤祐市
主題歌:須田景凪「ゆるる」(WARNER MUSIC JAPAN / unBORDE)
制作プロダクション:RIKIプロジェクト、共同テレビジョン
配給:エイベックス・ピクチャーズ
(c)行成薫/集英社 (c)映画「名も無き世界のエンドロール」製作委員会
公式サイト:https://www.namonaki.jp/
公式Twitter:https://twitter.com/namonaki2021
公式Instagram:http://instagram.com/namonaki2021

■配信情報
『Re:名も無き世界のエンドロール~Half a year later~』
dTVにて、1月29日(金)21:00独占配信
出演:岩田剛典、新田真剣佑、松井愛莉、山田杏奈、石丸謙二郎、金子ノブアキ、柄本明
原作:行成薫『名も無き世界のエンドロール』(集英社文庫)
総監督:佐藤祐市
監督:菊川誠
脚本:相馬光
主題歌:須田景凪「ゆるる」(WARNER MUSIC JAPAN / unBORDE)
(c)行成薫/集英社 (c)映画「名も無き世界のエンドロール」製作委員会
公式サイト:https://namonaki.jp/dtv/

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