『新世紀エヴァンゲリオン劇場版 DEATH(TRUE)2/Air/まごころを、君に』が“圧倒的”である理由

 そして最終話で、ついに作中最大の謎であった「人類補完計画」が発動する。その真相となる人類全体の贖罪の行為は、“神と等しき存在”となったエヴァンゲリオン初号機と、そのパイロットである碇シンジの願いそのものともつながっていく。“行き詰まった人類”を補完して同一の存在にしてしまうという計画は、他者への恐怖と自分自身への絶望という、ネガティブな個人的感情と歩調を合わせていくのだ。

 この背景として、日本で一時ブームとなるも、凶行へと走っていったカルト教団「オウム真理教」が起こした事件の影響があったはずである。多くの被害者を生み出した、この悲劇が起こったのは、信者たちが自分自身の頭で考えることを放棄し、絶対者とされた人物の言葉に踊らされ利用されてしまったことが大きな要因ではないのか。それは、岡本喜八監督の『激動の昭和史 沖縄決戦』(1971年)が本作に大きな影響を与えているように、ファシズムが引き起こす悲劇とも重なりを見せる。

 奇しくも近年、世界で大きな問題となっているのが、事実に基づかない情報に多くの人々が乗せられて判断を誤ってしまうという出来事である。これは、かたちを変えた第二次世界大戦時のファシズムの台頭であり、かたちを変えたカルト宗教の台頭ではないのか。

 本作はさらに、「エヴァ」のファンにすら牙を剥く。劇場に集った観客の姿を撮影した実写映像を使用し、その上に「気持ち、いいの?」という字幕を被せたのである。その挑発的な演出は一部の観客を怒らせ、作品の賛否を分ける事態となった。しかし、既存の考えや自分を規定するものを疑うという本作のテーマを考えれば、この表現はある意味で真摯な姿勢だといえよう。ファンたちがアニメーション作品に耽溺していくこともまた、一種のカルトの萌芽ではないのか。本作はその象徴となるキャラクターを“殺す”ことによって、「エヴァ」という“夢”から観客を現実へと帰還させるのである。

 自分の都合の良いものだけを信じるのでなく、自分や他人と真に向き合って現実と対峙すること。そして、自分の頭で考えること。本作『新世紀エヴァンゲリオン劇場版 DEATH(TRUE)2/Air/まごころを、君に』が到達する結論は、いま再び重要なメッセージとしてわれわれ観客に響くだろう。もし新劇場版を楽しみながら、本作を未見だという観客には、できることならぜひ劇場で鑑賞して、本作がもたらす興奮と、深さを味わってもらいたい。

 公開が延期された、『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』シリーズの新作にして最終作となるはずの『シン・エヴァンゲリオン劇場版』が掲げるコピーは、「さらば、全てのエヴァンゲリオン。」。おそらくこれが宣言しているのは、テレビシリーズや「旧劇」も含めた、全てのシリーズを本作で終わらせるという決意であろう。果たしてそれが、前衛的で重要なメッセージを持つ「旧劇」に新たな最後を与えるほどのものになるのか。その視点や興味も含めて、『シン・エヴァンゲリオン劇場版』の公開を楽しみに待ちたい。

■小野寺系(k.onodera)
映画評論家。映画仙人を目指し、作品に合わせ様々な角度から深く映画を語る。やくざ映画上映館にひとり置き去りにされた幼少時代を持つ。Twitter映画批評サイト

■公開情報
『新世紀エヴァンゲリオン劇場版 DEATH(TRUE)2/Air/まごころを、君に』
1月8日(金)~22日(金)期間限定上映
(c)カラー/EVA製作委員会

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