大倉忠義主演『知ってるワイフ』はもはやホラー!? 原作の韓国ドラマから日本版の見どころ解説
一方、日本版の第1話はかなりシビアだ。韓国版の主人公・ジュヒョクが良かれと思ってやることが、とことん「巻き込まれ型」なのに対して、日本版の主人公・元春の「優柔不断」な性格が目立つからかもしれない。元春を演じた大倉も、公式サイトのインタビューで「演じながら、“いや、お前(元春)のせいで事件が起き続けているのに!”とずっと思っていました(笑)」と話していたほどだ。
また、職場の上司の話にも中身がなく元春の仕事への熱意もどこか義務的。ゆとり世代の後輩との会話も淡白で関係性が薄く感じられる。同僚の津山(松下洸平)とのやりとりには少し頬が緩むも、家族の話となると“自分以外の結婚はみんな幸せそうだ、なぜ自分ばかり……”という元春の孤独感をより浮き彫りにしていくようなところがある。
さらに、澪を取り巻く環境がますます笑えない。ほぼワンオペ育児に加えて、家事、そしてアルバイトと、忙しない日常が彼女から笑う余裕を奪っていく。すり減っていく自分に、ちっとも気づこうとしない夫。“言っても無駄”という小さな絶望が日々積み重なり、なりたくもない悲しいモンスターにならざるをえない日々……韓国版がブラックコメディなのに対して、日本版はもはやホラーだ。
大倉はインタビューで「元春と澪のような夫婦関係になってしまうのは嫌だなぁと考えていました」と率直な感想を述べながら、一方で「男性スタッフの方が、奥さんとドラマを見たら元春の行動に“あなたと同じ!”と言われそうで一緒には見られないと言っていました(笑)」とも語っている。
これが、今の日本を取り巻く空気感なのか。それとも“夫婦あるある”として楽しめるのか、それとも観ていて苦しいほどに現実的なのか。今から、SNSを中心とした視聴者の反応が楽しみだ。リアルタイムな日本の状況を取り入れることで、視聴者の心に直接的に訴えかけることができるのがテレビドラマの醍醐味なのだから。
「良妻を持てば幸せになれるし、悪妻を持てば哲学者になれる」とは、作中に出てくるソクラテスの言葉。元春は「俺は哲学者だ」と言い聞かせながら、恐妻・澪と対峙していくのだが、実はこの言葉の前には「とにかく結婚したまえ」があるのを忘れたくない。それでも、結婚はいいものだ、と最後は笑えるドラマになることを切に願いながら。まずは、元春や澪の振り見て、我が振り直せ、といったところだろうか。私たちは過去に戻ってやり直すことはできなくても、今この瞬間から未来を変えることはできるのだから。
■放送情報
木曜劇場『知ってるワイフ』
フジテレビ系にて、1月7日(木)スタート 毎週木曜22:00~22:54放送
※初回放送15分拡大(22:00~23:09放送)
出演:大倉忠義、広瀬アリス、松下洸平、川栄李奈、森田甘路、末澤誠也(Aぇ!group/ジャニーズJr.)、佐野ひなこ、安藤ニコ、マギー、猫背椿、おかやまはじめ、瀧本美織、生瀬勝久、片平なぎさ
脚本:橋部敦子
編成企画:狩野雄太
プロデュース:貸川聡子
演出:土方政人、山内大典、木村真人
音楽:河野伸
制作:フジテレビ
制作著作:共同テレビ
(c)フジテレビ