『今際の国のアリス』国内外でヒットの理由 『バトル・ロワイアル』から続くジャンル人気から探る

“デスゲームもの”人気の理由を探る

海外からも人気の高い理由とは 「生きる」ことに価値を置くテーマ性

 今回、『今際の国のアリス』が海外でもここまでヒットしたことを考えると、過去に海外で高い評価を得たデスゲームもの『バトル・ロワイアル』との間に共通点がある。それは「殺し」ではなく「生き抜くこと」に価値を置いた作品であることだ。

 先述の通り、デスゲームジャンルは『バトル・ロワイアル』から派生し、趣旨と意味性がより細分化されてきた。しかし、その中でも絶えず生み出されてくるのは、単純に憎みあったクラスメイト同士の殺し合いではなく、理不尽で絶対的な存在である「何か」に立ち向かっていく類の作品だ。『リアル鬼ごっこ』や『神さまの言うとおり』、『カラダ探し』、『地上100階~脱出確率0.0001%~』、そしてあの『バトル・ロワイアル』もそうなのである。

 その理不尽な何かは、時に人外の存在であったり、呪いであったり、はたまた狂った社会である。『バトル・ロワイアル』は早い段階から、大人によって不条理に殺し合いを強いられ、最後には複数人で生きぬくことに成功した。その続編では、彼ら子供たちにそうさせたシステム(社会)を破壊しようと、立ち上がる。上で挙げた作品も、あくまで殺し合いをすることが重要なのではなく、その中で自分たちが安心して生きていける生活を取り戻すこと、生きることが最も大切なこととして描かれている。そういう深みと、その過程で築き上げられる絆は国境を超えて理解され、応援されやすいものなのではないだろうか。

 Netflix『今際の国のアリス』では、特に第3話が国内外ともに注目されている。その内容には詳しく触れないが、まさに主人公と彼の仲間が「生きること」についてもがき苦しむ、涙なしでは見られない名エピソードだった。残虐さだけではなく、その奥にあるヒューマンドラマを描いたからこそ、本ドラマはヒットしたのかもしれない。

 主人公3人組が、“まだ”人の往来が激しい渋谷の街に繰り出す長回しのシーンが印象的な、第1話の冒頭。これからデスゲームを体験する彼らが通ったセンター街は、かつて『バトル・ロワイアル』で生き残った七原秋也と中川典子が映画のラストで身を隠しながら歩んだ場所でもある。BR法というシステムへの復讐を誓った彼らが通った道を、有栖も追っていくことができるのだろうか。

※山崎賢人の「崎」は「たつさき」が正式表記。

■アナイス(ANAIS)
映画ライター。幼少期はQueenを聞きながら化石掘りをして過ごした、恐竜とポップカルチャーをこよなく愛するナードなミックス。レビューやコラム、インタビュー記事を執筆する。デスゲームに参加したら多分中盤まで生き残る。InstagramTwitter

■配信情報
Netflixオリジナルシリーズ『今際の国のアリス』
Netflixにて、シーズン1全世界同時配信中
原作:麻生羽呂『今際の国のアリス』(小学館『少年サンデーコミックス』刊)
監督:佐藤信介
出演:山崎賢人、土屋太鳳、村上虹郎、森永悠希、町田啓太、三吉彩花、桜田通、朝比奈彩、柳俊太郎、渡辺佑太朗、水崎綾女、吉田美月喜、阿部力、金子ノブアキ、青柳翔、仲里依紗
脚本:渡部辰城、倉光泰子、佐藤信介
音楽:やまだ豊
撮影監督:河津太郎
美術監督:斎藤岩男
アクション監督:下村勇二
VFXスーパーバイザー:神谷誠、土井淳
エグゼクティブ・プロデューサー:坂本和隆
プロデューサー:森井輝
企画・制作:(株)ROBOT
(c)麻生羽呂・小学館/ROBOT
Netflix作品ページ:https://www.netflix.com/今際の国のアリス

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