『逃げ恥』SP前の全話一挙放送も必見! 新たな1年の始まりに響く“こうあるべき”からの解放

『逃げ恥』が描く“こうあるべき”からの解放

 2021年も元日からあの“逃げ恥”が帰ってくる。

 2016年10月期の大ヒットドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』(TBS系、通称:逃げ恥)。本作は海野つなみの同名マンガを原作に、“契約結婚”を果たした「職ナシ」「彼氏ナシ」「居場所ナシ」の主人公・森山みくり(新垣結衣)と自身を“プロの独身”と称する女性経験のない津崎平匡(星野源)の同居生活を描いたラブコメディだ。

 最終回後も『逃げ恥』ブームは冷めやらず、これまで数回にわたり再放送されてきたが、2021年1月2日にその続編となるスペシャルドラマ『逃げるは恥だが役に立つ ガンバレ人類!新春スペシャル!!』の放送が決定。また放送に先立ち、元旦から『「逃げるは恥だが役に立つ」全話一挙放送SP』とスペシャルドラマのナビ番組が放送され、年始はまさに逃げ恥のお祭り状態となる。

 『私の家政夫ナギサさん』『この恋あたためますか』など、2020年に多くの話題作を生み出したTBS火曜ドラマ枠。この枠で放送されるドラマは基本的にラブコメディでありながら、ちょっとドキッとするような時代性を反映した展開やセリフが差し込まれることが多い。だからこそ現実世界で生きる視聴者の心を掴んでいるのだが、その走りとなったのが『逃げ恥』だった。

 主人公のみくりは、大学院を卒業しながらも就職難で派遣社員に。優秀であるはずの文系大学院卒が就職で不利になることも、その事情を知らない会社から「うちよりもっと良いところがある」という理不尽な理由で派遣切りに遭うことも私たちが生きる現実と重なる。

 一方で、そんな彼女が家事の一切を請け負う代わりに給料を受け取る雇用関係を平匡と結び、契約結婚という形を選んだことはとても革新的だ。『私の家政夫ナギサさん』でも描かれたが、たくさんの職業がある中でなぜか家事だけが軽視されがちで、主婦は給料すらもらえない……ということへの皮肉になっているのも面白い。ことさら、第10話で雇用関係を解除し、正式的な結婚を機に家事サービス無償化を提案した平匡に対し、みくりが放った「愛情の搾取」という言葉に共感を覚えた人も多かったのではないだろうか。

 また、『逃げ恥』には本作で再ブレイクを果たした石田ゆり子演じるみくりの伯母・土屋百合が裏ヒロインとして存在する。美人で若々しく、バリバリと仕事をこなすキャリアウーマンだが、男性経験が一切ないままアラフィフを迎えた百合。けれど本人は独身を謳歌しており、何より世間からの価値観に縛られた女性たちを自由にすべく、自分の背中を見せようとする生き様がかっこいい。普段は可愛くてたまらない姪のみくりにお節介をやき、時には大谷亮平演じる風見涼太からのアプローチに戸惑う姿とのギャップも彼女の魅力だ。

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