若村麻由美と杉咲花のやりとりが愉しい 『おちょやん』山村千鳥一座の行く末は?

『おちょやん』山村千鳥一座の行く末は?

 女優を目指す千代(杉咲花)は山村千鳥(若村麻由美)一座に入り、雑務をこなしながら千鳥の演技指導を受けられる日を待っている。NHKの連続テレビ小説『おちょやん』が第6週初日を迎え、わがままでクセの強い千鳥と千代のやりとりが愉しい回となった。

 千鳥の十八番の演目を見つめる千代の目は、道頓堀で芝居を見ていた時と同じ、真剣な眼差しだった。千代は役が貰えると信じて千鳥の世話役に戻った。だが千鳥のクセのある性格は相変わらずだ。舞台袖にはけた千鳥に「お疲れさんだす」とお茶を差し出すと、千鳥はにこりともせず「疲れてない」と即答し、その場を立ち去った。

 第5週で見せた自分自身に稽古をつける姿や稽古への熱の入れようから、千鳥の芝居へのすさまじい情熱は伝わってくる。だが、千鳥本人でないとその本質はなかなか掴みきれない。上演後、千鳥に叱りつけられた清子(映美くらら)が「どこがあかんかったんでしょうか?」と聞いても「知らないわよ、そんなこと!」「でも駄目なものは駄目!」と言い返すのが千鳥である。

 そんな千鳥とその不条理に慣れ始めた千代とのやりとりが面白い。

 千代は千鳥のセリフを暗唱しながら雑務をこなす。そこに通りかかった千鳥は「セリフいつ覚えたの?」と聞いた。千鳥の真剣な表情に「千代を感心する言葉が続くのでは」と一瞬期待が高まったが、サクセスストーリーのようにはいかない。千鳥は「あなたのその下手なセリフずっと聞かされてたらこっちまで芝居が下手になる。二度と声に出さないで」と言い放った。か細い返事をせざるを得ない千代の表情がなんとも言えない。

 稽古中の千鳥は「違う!」「何べん言ったら分かんだ!」と座員にものを投げつける。見ていてハラハラするのだが、思いもよらないものを手渡す千代のやりとりには緩急があり、ただただ理不尽な稽古に耐えるシーンにならないのが魅力的に映る。千代が、千鳥に手渡したのは、台本、扇子、そして豆。千鳥が怒鳴りながら豆を撒く姿はコミカルだ。キューピー人形を手渡され「これ、私の大切な……」と絶句する千鳥の表情はなんとも新鮮だった。

 千代への「上達したじゃない」という褒め言葉も、案の定、四つ葉のクローバー探しが上達した彼女に対する皮肉。「こういうものは、めったにないからうれしいの」というセリフにはさすがに共感する。

 千鳥と千代のやりとりは面白いが、終盤には厳しい現実も。山村千鳥一座のお客の数は日に日に減っていき、劇場の座本が打ち切りを宣告する。そして一座は、座長の千鳥抜きで子どもに人気の芝居に挑戦することに。千代は役を貰うことができたが、発声も芝居も先が思いやられる出来。果たしてどうなるのか……。

■片山香帆
1991年生まれ。東京都在住のライター兼絵描き。映画含む芸術が死ぬほど好き。大学時代は演劇に明け暮れていた。

■放送情報
NHK連続テレビ小説『おちょやん』
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45
※土曜は1週間を振り返り
出演:杉咲花、成田凌、篠原涼子、トータス松本、井川遥ほか
語り:桂吉弥
脚本:八津弘幸
制作統括:櫻井壮一、熊野律時
音楽:サキタハヂメ
演出:椰川善郎、盆子原誠ほか
写真提供=NHK
公式サイト:https://www.nhk.or.jp/ochoyan/

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