山崎育三郎、古川雄大、市川猿之助ら、2020年に活躍したミュージカル/歌舞伎界の舞台俳優たち

2020年に活躍した舞台俳優たち

玉置玲央、大貫勇輔、濱田めぐみ、橋本じゅんも

 2020年、ドラマ全体として舞台俳優たちの存在感が強く現れていたのは上記の『エール』と『半沢直樹』だが、ここからは個人プレイにも注目してみよう。

 まずピックアップしたいのがNHK「よるドラ」枠『伝説のお母さん』で、魔法使いの妻・メイ(前田敦子)の足を引っ張る夫・モブを、『恋する母たち』(TBS系)では自身の不倫が基で弁護士の業務停止処分を受ける蒲原繁樹を演じた玉置玲央。両役とも立場は違えど“クズ感”が漂うキャラクター。演じ手によっては“ただのクズ”になるふたつの役柄を、どこか憎めない人物として構築していたのが面白かった。

 ミュージカル界からは『ルパンの娘』(フジテレビ系)円城寺輝役で、よりトンチキ度に磨きがかかった歌とダンスを華麗に披露し、鮮やかな印象を残した大貫勇輔と、『親バカ青春白書』(日本テレビ系)前田のおばちゃん役で、舞台で魅せる圧倒的な歌姫モードとは真逆のキャラクターを軽やかに演じた濱田めぐみの名前を挙げたい。

『MIU404』(c)TBSスパークル / TBS

 最後はこの人、橋本じゅんだ。これまでも多数のドラマに出演している橋本だが、2020年は『MIU404』(TBS系)の陣馬耕平役や『共演NG』(テレビ東京系)の記者・中井役、『相棒』(テレビ朝日系)のゲスト主役など、あらためてその存在感を示した。中でも『MIU404』の陣馬役で伊吹(綾野剛)×志摩(星野源)の2人とは違うバディの形を九重(岡田健史)と構築し、厚みのある演技で作品を支えた姿が印象に残る。

 本来ならば『エール』ミュージカル俳優陣や『半沢直樹』歌舞伎俳優チームの活躍が追い風となり、新たな観客が劇場に集まってライブパフォーマンスの素晴らしさを体感していたであろう2020年。まだ少し厳しい状況は続きそうだが、2021年がエンターテインメント業界にとって、一歩でも前進できる年になるように、そして演劇界とドラマの現場でのエキサイティングな掛け算が生まれることを心から願って、この文章を閉じたい。

■上村由紀子
ドラマコラムニスト×演劇ライター。芸術系の大学を卒業後、FMラジオDJ、リポーター、TVナレーター等を経てライターに。TBS『マツコの知らない世界』(劇場の世界案内人)、『アカデミーナイトG』、テレビ東京『よじごじDays』、TBSラジオ『サキドリ!感激シアター』(舞台コメンテーター)等、メディア出演も多数。雑誌、Web媒体で俳優、クリエイターへのインタビュー取材を担当しながら、文春オンライン、産経デジタル等でエンタメ考察のコラムを連載中。ハワイ、沖縄、博多大吉が好き。Twitter:@makigami_p

■放送情報
連続テレビ小説『エール』総集編
NHK総合
12月31日(木)前編 14:00〜15:23
12月31日(木)後編 15:28〜16:56

出演:窪田正孝、二階堂ふみほか
写真提供=NHK
公式サイト:https://www.nhk.or.jp/yell/

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