町田啓太、作品ごとに激変する多彩な演技力 『チェリまほ』『今際の国のアリス』に至るまで

町田啓太、激変する多彩な演技力

 ドラマ、映画、CM、舞台と幅広いステージで活躍を続けている劇団EXILE。本稿では、劇団EXILEのメンバー一人ひとりのフィルモグラフィをたどりながらその魅力を分析。第4回目は、12月24日深夜に最終回が放送される『30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい』(テレビ東京ほか)にも出演している町田啓太について紹介していく。(編集部)

 『30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい』に出演中の町田啓太。このドラマでは、さわやかで完璧なサラリーマンの黒沢役を演じている。番組スタート時には、ありえないくらいの完璧さと、人の心を読むことができるようになった同僚の安達(赤楚衛二)から読み取られる、黒沢の妄想とのギャップに大いに笑わされた。

 しかし、回を追うごとに、そんな一見完璧に見える黒沢の、完璧ゆえの苦悩が見えることもあったり、また、安達の本質をよく見ていて、常に彼を肯定する姿に心を撃たれる人が続出。しかも、安達をただただ甘やかすように全肯定するのではなく、本来、安達が持っている可能性を最大限に引き出すような肯定になっていて、そんなところも丁寧に描かれていると思った

 こうした誠実すぎる役を誇張しすぎるのではなく、「こんな素敵な人も存在するのかもしれない」と思わせるのも、演じている町田啓太がいてこそだと思える。

 そんな町田のデビューのきっかけは、ダンスをやっている中で2010年に劇団EXILEのオーディションを経てメンバーとなったことであった。GENERATIONS候補生となった時期もあったが、ケガをきっかけに考えた結果、役者一本で歩いていく決意をし、再び劇団EXILEに復帰した。

『30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい』(c)豊田悠/SQUARE ENIX・「30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい」製作委員会

 初舞台は『ろくでなしBLUES』。その後もドラマ版『ろくでなしBLUES』(日本テレビ系)や『シュガーレス』(日本テレビ系)など、今の黒沢のイメージとは真逆の荒々しい役を演じていた。

 EXILEやLDHというと、固定したイメージを持っている人もいて、それは、ある意味ブランディングに成功しているともいえるのだが、劇団EXILEのメンバーをひとりひとり見ていくと、当たり前だが、そうしたイメージとは違う活動をしている人は多い。

 町田啓太も、NHKの連続テレビ小説『花子とアン』のヒロインの夫・村岡英治(鈴木亮平)の弟の郁弥を演じたり、また『美女と男子』や『女子的生活』、『定年女子』、大河ドラマ『西郷どん』『螢草 菜々の剣』などのNHKのドラマに多数出演したことで、広い世代に認識されるようになったのではないだろうか。

 誠実な役も多いが、『女子的生活』の後藤忠臣役は、デリカシーには欠けるし、ちょっとバカなところもあるけれど、どこか憎めないし、単純だからこその良いところもたくさんあるという、町田がやった中では珍しい役だった。こうした路線は、『女子高生の無駄づかい』(テレビ朝日系)などでも生かされていたのかもしれない。

『PRINCE OF LEGEND』(c)「PRINCE OF LEGEND」製作委員会 (c)HI-AX All Rights Reserved.

 TBSドラマ『中学聖日記』や、NHK『美女と男子』『定年女子』など、年上の女性との、さまざまな関係性を演じることも多い。それはたぶん、同年代の俳優よりも落ち着いていて、年齢差はあっても、人格を演じられる雰囲気があり、そんな俳優が同世代に意外と少ないこともあるのではないだろうか。

 そうかと思えば、劇団EXILEが総出演の『jam』や、EXILE TRIBEの面々が、ナンバー1の王子になることを競う『PRINCE OF LEGEND』では、一見、まっとうそうな人物なのに、どこかおかしな雰囲気の漂う役を演じて、観ているものに良い意味での違和感を残すこともできる。そうしたどこか不思議な空気感は映画『前田建設ファンタジー営業部』のヤマダ役にも生かされていた。掘削オタクで、作業服に伸びっぱなしの髪、好きな話になると、周りが見えなくなり、早口で延々説明しつづける姿は、おかしみがあると同時に、何かに夢中である人特融のキラキラすら見える(それは黒沢のキラキラともまた違うものである)。

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